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だいち4号、定常観測運用を開始–期待される「分解能3m、観測幅200km」の実力

2025.04.03 08:30

UchuBizスタッフ

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 2024年7月1日に打ち上げられた「だいち4号」(ALOS-4)は2025年3月31日に初期校正検証運用を終了し、定常観測運用を開始した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の第一宇宙技術部門が2025年4月1日に発表した。

 観測データは2025年4月から順次提供を開始する。一般配布は天地人とパスコから配布する予定。一般ユーザー向けの観測データの提供開始時期は確定次第発表する。

 定常観測運用は「基本観測シナリオ」に基づいて日本全土と全世界を観測する。災害時などには緊急観測にも対応する。

 だいち4号は、2006年に打ち上げられた「だいち」(ALOS)、2014年に打ち上げられた「だいち2号」(ALOS-2)の後継機として打ち上げられたフェーズドアレイ方式のLバンド合成開口レーダー(LバンドSAR)「PALSAR-3」を搭載した衛星。「だいち3号」(ALOS-3)は2023年3月に基幹ロケット「H3」試験機1号機で打ち上げられたが、軌道に乗せることができなかった

 ALOSシリーズの最新機であるだいち4号は、災害状況の把握、地盤沈下などの土木インフラ管理、水耕栽培などの農業での活用、森林伐採の監視、海水や海岸線の把握など、あらゆる分野でSAR衛星にしかできない情報を提供するという。定常運用期間は7年となっている。

 だいち4号は2024年10月18日の定常運用開始以降、PALSAR-3の観測データ公開に向けて約6カ月間の初期校正検証運用を実施。要求仕様を満足する画像に仕上げるために、観測データの評価や搭載機器のパラメータ、画質の調整を実施したという。

 PALSAR-3(Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar-3)はSARとして世界で初という「デジタルビームフォーミング」技術を活用。だいち2号の3mという高い空間分解能を維持しながらも、観測範囲は最大4倍(200km)に拡大されている。

PALSAR-3の高分解能3m、観測幅200kmモードによる九州地方の観測画像(R:HH偏波、G:HV偏波、B:HH偏波)、観測日は2025年2月18日(出典:JAXA)
PALSAR-3の高分解能3m、観測幅200kmモードによる九州地方の観測画像(R:HH偏波、G:HV偏波、B:HH偏波)、観測日は2025年2月18日(出典:JAXA)

 デジタルビームフォーミング技術は、アンテナで受信した電波をオンボードで高速にデジタル処理し、位相を調整すると同時に信号を合成することで、アンテナのビーム指向方向を任意に生成できるという。だいち4号では、同時に最大4方向にビームを形成できるとしている。

 Lバンドは、SARで活用される電波の中でも長い波長帯(約24cm)であり、植生を透過して地面に届くことで、より地面の情報を得やすいという。Xバンド(波長帯は約3cm)やCバンド(波長帯は約6cm)では、森林を観測すると、主に木の上の葉の部分で電波が反射してしまう。

 LバンドSARはだいちとだいち2号でも活用されている。「干渉SAR(Interferometric SAR:InSAR)」を使う場合でも、地面の情報を得やすいLバンドが最適とされている。

 2014年から観測データを蓄積しているだいち2号のデータと組み合わせた解析にも対応している。長期的な地殻変動の把握、火山活動や地盤沈下、地滑りなどの異変の早期発見への活用も期待されている。

チベット南部地震の地殻変動の観測結果。2025年1月7日に観測。2014年10月19日~2025年1月15日のデータを組み合わせている(出典:JAXA)
チベット南部地震の地殻変動の観測結果。2025年1月7日に観測。2014年10月19日~2025年1月15日のデータを組み合わせている(出典:JAXA)

 だいち4号は、通信速度が3.6Gbpsでデータを転送できる。発生するデータ量が大きな、高分解能3mの観測でも、水平偏波送信と水平偏波受信の「HH偏波」、水平偏波送信と垂直偏波受信の「HV偏波」での2偏波観測が常時可能としている。

2025年2月20日~3月2日にだいち4号で観測された画像で作成されたニュージーランド北部の森林分布図。LバンドSARは森林の有無を判断することに適しており、だいちからの継続的な森林観測データとともに長期的で高頻度な森林状況把握への活用にも期待されるとしている(出典:JAXA)
2025年2月20日~3月2日にだいち4号で観測された画像で作成されたニュージーランド北部の森林分布図。LバンドSARは森林の有無を判断することに適しており、だいちからの継続的な森林観測データとともに長期的で高頻度な森林状況把握への活用にも期待されるとしている(出典:JAXA)

関連情報
JAXA第一宇宙技術部門発表
だいち4号概要
だいち4号基本観測シナリオ
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