京都大と鹿島、月面での人工重力居住施設を共同研究--構造や建設方法を検討

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京都大と鹿島、月面での人工重力居住施設を共同研究–構造や建設方法を検討

2024.12.19 16:00

UchuBizスタッフ

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 京都大学と鹿島は月面での人工重力居住施設の共同研究を開始した。12月18日に発表した。

 2022年に発表した共同研究では、宇宙での居住に必要な人工重力、縮小生態系、人工重力交通システムという3つの構想を掲げ、基礎的な概念を構築した。同研究は、国内外から大きな反響を得たことで実現性を高める研究が本格的に必要と認識したと説明する。

 今回開始した共同研究では、これまでの概念実証から一歩進めて、将来的な実現に向けて、月面での人工重力居住施設の構造成立性や施工成立性、居住性、人体への影響評価、閉鎖生態系(ミニコアバイオーム)の確立をそれぞれ研究する。地球上での実装につなげることを目標にしている。

 今回の共同研究では、(1)人工重力居住施設の成立性、(2)ミニコアバイオームの成立性、(3)地球上での過重力施設の実現性――という3つの目的を掲げている。

 (1)では、宇宙や医療の分野から注目される「月面人工重力居住施設(ルナグラス)」の実現性を世界に先駆けて研究して、構造成立性と建設方法を検討する。宇宙居住の可能性を広げ、月や火星といった天体上でも地球と同程度の重力を実現することで人類の分断を防ぎ、恒久的で平和な宇宙進出が期待できるようになるとしている。

 (2)では、宇宙独自の課題と閉鎖環境で成立する資源循環などの研究を通じて、地球上の環境問題解決につながる知見を得ることが目的。外部からの資源供給に期待できない、閉鎖環境での生態系の維持に必要な最低条件を追求することで今後の宇宙居住や地球環境保全に生かせる技術になることが期待できるという。

 (3)では、概念実証を兼ねて計画する地球上の過重力施設について、回転体独自の課題に挑戦する。おわん型の活動空間は未来の月面などの居住空間体験になると説明。地球上での人工重力施設の実現性が確認されれば、骨粗鬆症抑制やトレーニングなど健康増進施設としての実用化が可能になるとしている。

(左から)月面人工重力居住施設「ルナグラスNEO」とルナグラスNEOの内観(出典:鹿島)
(左から)月面人工重力居住施設「ルナグラスNEO」とルナグラスNEOの内観(出典:鹿島)

 人工重力居住施設の実現には多くの課題があると説明。理想型を掲げ目標を設定することで、課題解決に向けたさまざまな分野の交流のきっかけになるという。施設内に生態系確立を研究することで地球環境の重要性を再認識し、地球外宇宙をも包含した持続可能な社会の構築に寄与できるとしている。今後は人工重力居住施設の実現に向けて、以下のような具体的な条件を確定させて成立性を検証する。

  • 建設方法は現地材料利用、低重力など現地環境利用、遠隔操作現地無人施工を検討
  • 月面に閉鎖居住空間を構築するための構造的課題として、天体の重力と遠心力、気圧に対する成立性を検証し、建設方法を検討
  • 回転する施設であり居住性を確認する必要。医学的見地からの適正遠心力環境(半径、回転数、合力)を検討して、人体に対する影響を評価
  • 太陽による宇宙放射線の遮蔽を検討、施設材料種別の選定と厚みを検証
  • 回転体独自の課題として、内部での熱移動や流体挙動を解明し、回転安定性のためのアクティブ制御などを検討

 研究プロジェクトは、京都大学 大学院 総合生存学館 SIC 有人宇宙学研究センターと京都大学の関連部局(工学研究科、理学研究科、防災研究所)と鹿島の共同研究として取り組む。取り組む体制としてはテーマごとに専門の京都大学教授陣が参加する。必要に応じて、その他の有識者の協力も得て進めていくとしている。

地球上での過重力施設「ジオグラス」(出典:京都大学)
地球上での過重力施設「ジオグラス」(出典:京都大学)

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鹿島プレスリリース

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