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コルク佐渡島氏が語った「宇宙兄弟」誕生エピソード–グッズ制作のこだわりやファンを増やす工夫も

2024.09.13 09:00

藤井 涼(編集部)

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 JAXAの宇宙飛行士候補者募集ともコラボするなど、国民的な宇宙作品である人気漫画「宇宙兄弟」。2008年に連載を開始し、2024年9月時点でコミックは44巻まで発売。物語は最終章に突入し、いよいよクライマックスが近づいている。

 そんな、宇宙兄弟の初代担当編集者がコルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏だ。講談社の編集者を経て、2012年にクリエイター・エージェンシーのコルクを創業。講談社時代に連載を立ち上げた「ドラゴン桜」や「宇宙兄弟」の作家とは、現在もエージェント契約を結んでおり、著作権管理やファンコミュニティ運営、グッズ展開などを通して、作品の価値を最大化している。

コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏

佐渡島氏が語った「宇宙兄弟」誕生エピソード

 8月23日に福岡市で開催されたイベント「宇宙MUGEN会議」では、2021年に東京から福岡に移住した佐渡島氏が登壇。宇宙兄弟の誕生エピソードを語ったほか、グッズ制作の際のこだわりや、ファンを増やすための工夫について語った。

 まず、「宇宙」を題材にした理由について。きっかけはドラゴン桜の担当編集だった20年ほど前に、(インターステラテクノロジズ創業者の)堀江貴文氏から「これからは宇宙がくる」と聞かされたことだったという。また、ドラゴン桜を手がけたことで教育産業と深い関わりを持つことができた経験から、「漫画を通じて、次はどの産業と繋がりたいか」を考えたときに、浮かんだのが宇宙だったと振り返った。

 それまでの日本の宇宙作品は、「銀河鉄道999」や「機動戦士ガンダム」などSFやファンタジーが多かったが、宇宙兄弟は宇宙飛行士選抜試験の様子を現実に近い形で描くなど、リアリティにこだわっていることが特徴だ。これは作者の小山宙哉氏の意向だという。

 「(日本人女性初の宇宙飛行士である)向井千秋さんの旦那さん、向井万起男さんの書籍『君について行こう』を読んで、こういう漫画にすることを決めた。当初はムッタが教師、ヒビトが宇宙飛行士という設定にしてみたが、面白くならなかったので、ムッタも宇宙に行かせることにした」(佐渡島氏)

グッズ制作のこだわりやファンを増やす工夫

 実は一番最初に作られた宇宙兄弟のグッズは、あえて主役ではなく宇宙飛行士仲間「北村絵名」が髪の毛に付けた「絵名の惑星ヘアピン」だったという。天然石を使ったことから3個セットで単行本27巻の記念セットとして、「最初は約1000個限定で作り、恐る恐る発売したら即完売した。(最終的に)今も人気のアイテムとしてリアルイベントなどで限定再販されている」と佐渡島氏は明かす。

「絵名の惑星ヘアピン」(C)小山宙哉/講談社

 作中で北村絵名が惑星ヘアピンを付けたのは「ピシッ」とした気持ちで宇宙へ向かうシーンだった。購入者の中には大事な試験などの際に、このヘアピンを身につけて臨んだ人もいたようだ。この経験から、身につけることで作中のキャラクターと“同じ感情”になれることに価値があると考え「漫画の中の感情になるためのグッズ」を作るようになったという。

(C)小山宙哉/講談社

 一方で、日々醸造とコラボした限定月見酒「月日」や、JAXAと東レが共同開発した宇宙技術搭載ウェアとコラボした「MOONWORKER Tシャツ」など、さまざまな企業とも宇宙兄弟ブランドを使って積極的にコラボレーションしているが、これはなぜか。

日々醸造とコラボした限定月見酒「月日」
宇宙技術搭載ウェアとコラボした「MOONWORKER Tシャツ」

 この疑問について佐渡島氏は、宇宙技術に象徴される「最高・最先端のものづくり」と宇宙兄弟の「心を前に向かせる物語」を掛け合わせることで、いいブランドができると語る。そのため、コルク社内でも「『宇宙兄弟グッズではなくブランドだ』という気持ちで商品開発をしていると話した。

 

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