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ispace「ミッション2」、月面ローバーがJAL機で日本到着–冬に打ち上げへ

2024.09.05 05:41

小口貴宏(編集部)

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 月面探査プログラム「HAKUTO-R」を手掛ける日本のスタートアップispaceは9月4日、今冬の実施を予定している2回目の民間月面着陸「ミッション2」に搭載する探査車(ローバー)が無事日本に到着したと発表した。

月を指差す登壇者(左からispaceで最高収益責任者を務める斉木敦史氏、ispaceで代表取締役CEO & Founderを務める袴田武史氏、Axiom Spaceで宇宙飛行士兼アジア太平洋地域 最高技術責任者(CTO)を務める若田光一氏)

 ミッション2のローバーを設計製造したのは、ルクセンブルクに拠点を置く欧州法人のispace EUROPEだ。ispaceは日本、米国、欧州の3拠点でグローバルに展開している。ローバーの実物は現在、茨城県つくば市にある筑波宇宙センターに移動しているという。

 ローバーの名称は「TENACIOUS」(テナシアス)で、「粘り強い」という意味から命名した。高さは26cm、幅が31.5cm、全長が54cmで、重さは5kg。躯体には炭素繊維複合材(CFRP)を採用し、軽量ながらロケット打ち上げ時の振動に耐えられるようにした。

ローバーの名称は「TENACIOUS」(テナシアス)

 本体には月の砂(レゴリス)をすくうスコップを搭載。すくっている様子は高精細カメラで記録する。すくったレゴリスは米航空宇宙局(NASA)に売却する契約となっている。

 TENACIOUSは、同じくispaceが開発する着陸機(ランダー)の「RESILIENCE」に搭載され、冬に米フロリダ州のケープカナベラルからSpaceXの「Falcon9」ロケットで打ち上げられる予定だ。

輸送は日本航空が担当

 なお、ランダーの欧州から日本への輸送は日本航空(JAL)が担当した。同社はispaceに出資しており、組み立て設備なども提供している。ミッション2では千葉県成田市にある日本航空の設備でランダーの試験モデルを組み立て、その結果をもとにフライトモデルを完成させた。

 日本航空でイノベーション本部長を務める鈴木隆夫氏は、ispaceを支援する理由について「経済産業省の調べでは、2040年には宇宙ビジネス市場規模は140兆円にまで急成長する。明らかな成長産業で、ここに新規事業として参入しない手はない」と述べた。

日本航空でイノベーション本部長を務める担当する鈴木隆夫氏

 発表会には、かつて日本航空で航空機整備を担い、後に宇宙飛行士となった若田光一氏も登壇。「日本航空での整備の仕事が宇宙での仕事に大いに役立った」と振り返った。また「人類はアポロ以来、50年以上も月に降り立っていない」とし、ispaceの「月に経済圏を作る」というミッションについて「ぜひ応援させていただきたい」と述べた。

Axiom Space 宇宙飛行士兼アジア太平洋地域 最高技術責任者(CTO)の若田光一氏

 ispaceで代表取締役CEO & Founderを務める袴田武史氏は「ミッション1は月面着陸には完全には成功しなかったが、非常に多くの経験を得られた。ミッション2の確実な成功に向けてまい進していきたい」と述べた。

ispaceで代表取締役CEO & Founderを務める袴田武史氏

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