スターリンク新型衛星も「光害」、天文学者が影響を懸念--スマホと直接通信

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スターリンク新型衛星も「光害」、天文学者が影響を懸念–スマホと直接通信

2024.08.08 08:00

塚本直樹

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 米Space Exploration Technologies(SpaceX)が運用する、地上のスマートフォンと直接通信する「Starlink」の新型衛星は、従来の衛星よりも約5倍も明るいことが、天文学者により報告されている。海外メディアのSpace.comで報じられた

 Starlinkは地球低軌道(LEO)に多数の衛星を打ち上げることで、高速で低遅延というブロードバンド接続を提供している。スマートフォンとの直接通信「Direct to Call(DTC)」(一般的には「モバイルダイレクト」とも呼ばれる)に対応した新型衛星の打ち上げも開始された

 論文(PDF)著者の1人であるAnthony Mallama氏によれば、DTCの衛星は地上わずか350kmを周回しており、従来のStarlinkの550kmよりも高度が低い。研究時点で、衛星のシャーシや太陽電池パネルを調整して太陽に照らされる部分を減らす技術が、まだ適応されていなかったとされている。

 SpaceXは天文学者からの懸念を受けて、2020年から通常のStarlinkの衛星に、明るさの軽減技術を適用し始めた。DTCに同様の技術を適用した場合、その明るさは従来の2.6倍に抑えられると予測されている。DTCは見せかけの速度が早く、地球の影の部分に長くとどまる、天文学への悪影響が相殺される可能性も指摘されている。

 Starlinkのほかに、米AST SpaceMobileの「Bluebird」もLEOを周回しており、天体観測への影響が以前から懸念されている。光学観測はもちろん、電波観測にも影響があることも報告されている

2019年5月25日に「NGC 5353/4」と呼ばれる銀河群を観測する、米アリゾナ州のローウェル天文台の望遠鏡の視野を通過するStarlink衛星。衛星の反射光が斜めの線となって映ってしまった(出典:Victoria Girgis/Lowell Observatory)
2019年5月25日に「NGC 5353/4」と呼ばれる銀河群を観測する、米アリゾナ州のローウェル天文台の望遠鏡の視野を通過するStarlink衛星。衛星の反射光が斜めの線となって映ってしまった(出典:Victoria Girgis/Lowell Observatory)

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