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「だいち4号」搭載通信端末の2軸ジンバル、正常に作動–光通信技術実証へのステップ
2024.07.23 14:30
先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)に搭載された光ターミナル(OLLCT)の2軸ジンバル(CPM)が正常に作動していることが確認された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の第一宇宙技術部門が7月22日に発表した。
CPM(Coarse Pointing Mirror)の動作が確認されたことで、静止軌道(GEO)の光データ中継衛星に搭載された「衛星間光通信システム(Laser Utilizing Communication System:LUCAS)」との間でレーザーでの光通信技術実証や運用実証のための重要なステップになるという。
CPMは、GEOを周回している光データ中継衛星に視野を取りつつレーザー光を受け取るために駆動させるミラー内蔵の2軸ジンバル。通信を確立する上で不可欠な要素の一つという。
OLLCT(Optical Leo Laser Communication Terminal)が光データ中継衛星の方向に向き続けるための可動部分であるCPMは、打ち上げ時の振動環境から守るため、衛星本体に固定した(ローンチロック)状態で打ち上げられる。打ち上げ後に軌道上でローンチロックから解放された後でアジマス軸、エレベーション軸の2軸それぞれで動作が確認されたとしている。
正常に動作するとともに、地上試験で確認していた光データ中継衛星を示準できる性能を維持していることも確認された。今後も、光データ中継衛星との光通信技術実証に向けてOLLCTの機能確認を進めていくという。
光データ中継衛星には光ターミナル(Optical Geo Laser Communication Terminal:OGLCT)が搭載されている。だいち4号は、国産基幹ロケット「H3」3号機で7月1日に打ち上げられた。
LUCASは、GEOを周回する光データ中継衛星と地球低軌道(LEO)を周回する観測衛星の間のデータ中継を波長1.5μmのレーザーを活用する光通信システム。
観測衛星の画像などの観測データをいったん光データ中継衛星が中継して、光データ中継衛星から地上局に送信する仕組み。地上局1局との直接通信だと、観測衛星が地球を1周する90分のうち10分程度しか通信時間が確保できない。LUCASの仕組みを活用すると、約4倍の40分、軌道周回1周のうち半分通信できるようになる。
JAXAは過去に、電波を利用したデータ中継技術衛星(Data Relay Test Satellite:DTRS、愛称「こだま」)で「だいち2号」(ALOS-2)などの観測衛星が取得したデータを中継伝送することに成功。こだまに搭載された通信アンテナの後継は3.6mで、通信速度は240Mbps。LUCASでの通信速度は1.8Gbpsとこだまの7倍以上高速化。アンテナの口径は14cmと30分の1に小型化されている。
光通信技術は、衛星間光通信実験衛星(Optical Inter-orbit Communications Engineering Test Satellite:OICETS、愛称「きらり」)で軌道実験に成功している。