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アクセルスペースが軌道上実証サービス「Axel Lab」–「自社技術を宇宙で試したいけど機会がない」を解決

2024.07.18 10:59

小口貴宏(編集部)

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 小型衛星の開発や運用を手掛けるアクセルスペース(東京都中央区)は7月17日、軌道上実証サービス「AxelLiner Laboratory」(AL Lab)を発表した。部品メーカーや企業の新規事業担当者が気軽に宇宙実証できる機会の提供をめざす。

左からシナノケンシで代表取締役社長を務める金子行宏氏、アクセルスペースで代表取締役 最高経営責任者(CEO)を務める中村友哉氏

 AL Labは、メーカーなどが、自社の技術を実際の宇宙空間で実証できるサービスだ。日本には宇宙との親和性が高い技術が多く眠る一方、実際に宇宙で役立つかを実証するハードルが高く、宇宙ビジネスへの参入障壁になっていた。こうした課題を解決するのが同サービスだ。

これまでの軌道上実証にはコスト面や頻度面での課題があった

 AL Labの軌道上実証では、アクセルスペースが開発した汎用衛星バスを用いる。同バスは小型衛星の設計から開発、運用までを一気通貫して提供するアクセルスペースの「AxelLiner」事業から流用したもので、安価な軌道上実証を実現する肝となる。

AL Labのサービス内容

 具体的には、年4回程度の打ち上げ機会を提供するという。サイズは6U〜180Uまで対応。一回に打ち上げる「衛星」の実証スペースは180Uサイズで、そこに各社から受注したさまざまな技術実証を相乗りさせる。実証費用は1Uあたり10万ドルを切る価格を想定する。アクセルスペースで代表取締役 最高経営責任者(CEO)を務める中村友哉氏は「世界的にも競争優位性のある価格をめざす」と述べた。

 オプションとして、実証した技術を技術成熟度(TRL)で評価するオプションを用意する。この評価には、アクセルスペースが衛星オペレーターとして培った知見を生かすという。

第一号顧客はシナノケンシ

 Axel Labの第1号顧客は、精密モーターを開発するシナノケンシ(長野県長野市)だ。同社は衛星の姿勢制御に欠かせないリアクションホイールを開発しているが、100kg級衛星向けリアクションホイールの実証をAxel Labで実施する。実証衛星は2026年に打ち上げるという。

 第2弾以降の想定顧客は、宇宙用コンポーネント開発者、ミッション機器開発者などを想定するほか、それ以外にもエンタメやマーケティングで「宇宙に何かを打ち上げる」ことをめざす新規事業開発者もターゲットとする。また、日本のみならず海外からの需要も取り込む。

 ロケットの打ち上げ手段としてはSpace Exploration Technologies(SpaceX)以外も想定する。中村氏は「衛星の打ち上げというとSpaceXが選ばれがちだが、世界各国で100kg級衛星を打ち上げるロケットの開発が進んでいる。将来的にはこうしたロケットの利用も想定している」と述べた。

 また中村氏は、政府の宇宙戦略基金の1テーマとして「衛星部品・コンポーネントの開発・実証」が選定されたことに触れ、軌道上実証のニーズが今後も高まるとの見通しを示した。

軌道上実証サービスの市場規模は拡大する見通し

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