小惑星「アポフィス」で欧州が探査計画を発表--2029年に地球の近くに飛来

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小惑星「アポフィス」で欧州が探査計画を発表–2029年に地球の近くに飛来

2024.07.17 17:15

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 2029年4月に地球のそばを通過する小惑星Apophis」(アポフィス)に向けて、欧州宇宙機関(ESA)は探査ミッション「Ramses」(ラムセス)を予定していると2024年7月16日に発表した。

 Apophisは直径350mの小惑星で、2029年4月には地球の静止軌道(約3万6000km)よりも近くを通過すると予測されている。米航空宇宙局(NASA)は探査機「OSIRIS-APEX」(以前は「OSIRIS-REx」)による探査ミッションを予定しており、複数の民間企業が探査ミッションを提案、米連邦議会下院も民間セクターとの連携を要請している

 Ramsesの正式名称は「Rapid Apophis Mission for Space Safety」で、Apophisについての詳細な調査と、地球に衝突しうる小惑星をどのように逸すかが検証される。RamsesのApophisへのランデブーは2029年2月が予定されている。

 仏国立科学研究センター(CNRS)で研究ディレクターを務めるPatrick Michel氏は、「自然が小惑星を私たちのところに連れてきて、実験が行える。我々はApophisが強い潮汐力によって引き延ばされ、圧縮されるのを見守ることになる。これにより、地表の下から新しい物質が見つかる可能性がある」と述べている。

 Apophisのように、静止軌道より近く地球に接近する事態は極めてまれな現象として注目されている。Ramsesは、Apophisにランデブーして、小惑星が重力にどのようにゆがみ、変化するかを観測する。Apophisの組成や内部構造、質量、密度などに加えて、地球の重力に対する反応なども調査する。

 RamsesがApophisに2029年2月にランデブーするためには、2028年4月に打ち上げる必要がある。2025年11月に開催される予定のESAの欧州宇宙理事会でRamsesにコミットするかどうかが決定される。

 Ramsesは、2024年10月に予定されている探査機「Hera」のように2つのキューブサットを搭載。Apophisに到着するとキューブサットを展開する。

 Apophisのように地球に接近する軌道で周る天体は「地球近傍天体(Near-Earth object:NEO)」と呼ばれる。

 2024年10月に打ち上げられるHeraは、米航空宇宙局(NASA)の衛星を意図的に衝突させて小惑星の軌道を変更させるミッション「Double Asteroid Redirection Test」(DART)の影響の観測を予定している。DARTは2022年9月に、小惑星「Didymos」の衛星である小惑星「Dimorphos」に衝突して、軌道の変更に成功した

 DARTとHeraは、小惑星衝突から地球を守るための“惑星防衛(プラネタリーディフェンス)”を国際共同で進める「Asteroid Impact and Deflection Assessment(AIDA)」計画として進められている。Ramsesも惑星防衛の一環として進められる。

Ramsesのイメージ。初期的なイメージであり、最終的なデザインにはならないとしている(出典:ESA-Science Office)
Ramsesのイメージ。初期的なイメージであり、最終的なデザインにはならないとしている(出典:ESA-Science Office)

関連情報
ESA発表
Space.com

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