ispace月着陸船、熱真空試験で成功基準--今冬打ち上げ

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ispace月着陸船「レジリエンス」、熱真空試験を完了–今冬打ち上げ予定

2024.06.28 15:30

UchuBizスタッフ

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 ispace(東京都中央区)は6月27日、民間月探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2として活用される月着陸船(ランダー)「RESILIENCE」のフライトモデルが熱真空試験を完了させたことを発表した。今冬の打ち上げに向けて順調に開発が進んでいるという。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターで2023年7月ごろからランダーのフライトモデル試験に向けて組み立てを開始。ミッション2に輸送予定のほぼすべての貨物(ペイロード)を搭載完了後、同センターの環境試験設備で試験を実施した。

筑波宇宙センターでispaceのエンジニアがRESILIENCEを大型チャンバーに移動させている(出典:ispace)
筑波宇宙センターでispaceのエンジニアがRESILIENCEを大型チャンバーに移動させている(出典:ispace)

 10日間の試験ですべての試験項目で成功基準を満たしていることを確認。現在は試験の詳細データを評価している。評価結果は運用に向けたランダーの熱制御パラメーターの最適化、運用手順の改善に反映される。

 フライトモデルでの熱真空試験は、宇宙空間の真空条件と温度環境を模擬する大型チャンバーの中で実施。試験では、ランダーの電源系や航法誘導制御系機器、通信系、熱制御が実際の宇宙空間での航行を摸した環境で正常に作動することを確認した。ランダーに搭載された通信系を利用して、ランダーシステムへの接続評価やコマンドの送信、計測機器からのデータ送信など実際の航行を想定した操作確認も実施した。

 RESILIENCEは、米フロリダ州ケープカナベラルからSpace Exploration Technologies(SpaceX)の「Falcon 9」で打ち上げられる。RESILIENCEには、複数のユーザー企業からのペイロードに加え、欧州法人ispace EUROPE(ispace EU)が開発する小型探査車(マイクロローバー)も搭載、マイクロローバーで月のレゴリス採取を予定している。

 マイクロローバー後部には、HAKUTO-Rのコーポレートパートナー企業であるスウェーデンのEpiroc ABが開発するスコップを搭載。スコップでレゴリスを採取し、マイクロローバーに搭載したカメラで採取したレゴリスなどを撮影する計画。採取したレゴリスは、ispace EUから米航空宇宙局(NASA)に譲渡される。2020年12月にNASAによる世界初となる月資源の商取引プログラムにispace EUが採択された。

 ispaceは日米欧でそれぞれの地域の文化や多様性を生かしながら、1つの統合的なグローバル企業としてミッション2とミッション3の開発を同時に進めている。今冬に日本法人が主導するのはミッション2、2026年には米法人ispace technologies U.S.(ispace US)がミッション3を主導する計画。2027年には、現在日本で開発している「シリーズ3ランダー」でのミッション6を予定している。

筑波宇宙センターでRESILIENCEの試験を準備するispaceエンジニア(出典:ispace)
筑波宇宙センターでRESILIENCEの試験を準備するispaceエンジニア(出典:ispace)

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ispaceプレスリリース

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