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KDDI、宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」始動–低軌道の実験環境など提供へ
2024.05.30 14:49
KDDIは5月30日、スタートアップと大企業による宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を開始した。宇宙や宇宙以外のスタートアップ、大企業や有識者が「宇宙」を軸に共創し、宇宙技術を活用して地上の課題解決を目指す。
同プログラムでは、宇宙空間を再現した3Dデジタル実験環境や、低軌道上での実験環境、宇宙領域の有識者によるメンタリング・ネットワーキング機会をスタートアップや大企業に提供。企業が宇宙事業に参入しやすい環境を整備する。
また、新たな技術や事業アイデアを持つスタートアップと、宇宙を活用した事業の開発をめざす大企業をマッチングする。そして、宇宙開発だけでなく、宇宙技術を活用した地上の社会課題解決の事業化促進も図る。
地上で宇宙実験ができる「3Dデジタル空間」提供
同プログラムの肝となるのが、2025年度に提供する3Dデジタル空間だ。同空間はいわば「宇宙デジタルツイン」で、3Dで気軽に宇宙実験が可能。微小重力や真空、温度、放射線など、宇宙空間の極限環境を再現し、実際に宇宙に行かなくても宇宙ビジネスのPDCAを高頻度で回せるという。
この3Dデジタル空間はスペースデータが開発した。同社で代表取締役社長を務める佐藤航陽氏は「宇宙をインターネットのように身近していく」と説明。実際の宇宙実験は莫大なコストが必要だが、同プラットフォームなら手軽に宇宙ビジネスの検討ができると述べた。
また、現時点での開発状況について「重力環境は再現できている。放射線の再現などは、実際の機体データをいただき、今現在宇宙に打ち上げている企業から実データを得ながら実装していく」とした。デモではデジタル空間上に完全再現した国際宇宙ステーション(ISS)も披露した。
2027年以降は低軌道での実験環境も
MUGENLABO UNIVERSEでは、2027年度をめどに宇宙での実験機会も提供する。具体的には、ElevationSpaceの宇宙環境利用・回収プラットフォームを提供し、微小重力環境でも育成可能な苗や、微小重力を生かした創薬、新素材などの研究を可能にする。
さらに、デジタルブラストの協力のもと、国際宇宙ステーション(ISS)において、月や火星など多様な重力環境を再現した細胞実験や培養実験が行える「AMAZ」の利用機会を提供。このほか、鳥取砂丘を活用した月面実証フィールド「ルナテラス」での実証実験も予定する。
宇宙ビジネスの専門家による勉強会も
加えて、ispaceで代表取締役 CEOを務める袴田武史氏や、SPACETIDEの代表理事 兼 CEOを務める石田真康氏、宇宙エヴァンジェリストの青木英剛氏などを講師陣とした宇宙事業に関する勉強会を実施予定。地上ビジネスの専門家も多数アドバイザーとして参加する。
同プログラムについて、KDDIで取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長を務める松田浩路氏は「(これまで提供している)KDDI ∞ Laboはスタートアップと大企業の共創ができるプラットフォームとして経済産業省からも高い評価をいただいている。本日から新章ということで、オープンイノベーションのフィールドを宇宙にも拡張していく」と述べた。
KDDI オープンイノベーション推進本部長の中馬和彦氏は、宇宙を軸にしたスタートアップと大企業のマッチングについて、日本の宇宙スタートアップの持続性を高めるとの認識を示した。また「パートナーの大企業が支援の一環として出資することもある」とした。
参加資格
MUGENLABO UNIVERSEには、大企業として、関西電力・KCJ GROUP・KDDI・サントリーホールディングス・松竹・スカパーJSAT・住友不動産・大日本印刷・電通・東急・TOPPAN・三井住友海上火災保険・三井物産の13社が参加する。
スタートアップのエントリー条件は、設立から10年以内の未上場企業で、製品やサービスをすでに商用化している企業だ。公式ホームページから申し込みを受け付けている。