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PDエアロスペース、ジェットとロケットの混成エンジンで燃焼実験に成功–世界初
2024.05.27 17:30
“宇宙飛行機(スペースプレーン)”を開発するスタートアップ企業PDエアロスペース(PDAS、名古屋市緑区)は5月27日、「デトネーション」と呼ばれる技術をベースにした、ジェットエンジンとロケットエンジンの「混成(コンバインド)方式」の燃焼実験に成功したことを発表した。世界初という。
ジェットエンジンは、大気中にある酸素を使って燃料を燃やすが、ロケットエンジンは、酸素の代わりの酸化剤として液体酸素で液体水素やメタンなどの燃料を燃やす。
PDASが開発するスペースプレーンは、ジェットエンジンとロケットエンジンを切り替えて動作させることで既存の空港でも離着陸が可能になるという。同社は2030年の宇宙旅行を実現させるべく、有人での準軌道(サブオービタル)飛行が可能なスペースプレーンの開発と就航を目標にしている。現在、飛行実験機や新型エンジン、宇宙港など、さまざまな開発を並行して進めている。
同社は、大気圏と宇宙空間の両方を飛行するための技術としてジェットとロケットを切り替えるエンジンを提唱。2017年と2022年にデトネーションをベースにしたエンジン切り替えの初期実験に成功した。
日本語で「爆轟」(ばくごう)と呼ばれるデトネーションは、燃料が酸化剤と混合した際にガスの膨張速度が音速以上のスピードになる現象。米航空宇宙局(NASA)と米宇宙スタートアップ企業のVenus Aerospaceが共同で新型の「回転デトネーションロケットエンジン」(Rotating Detonation Rocket Engine:RDRE)の燃焼実験に成功している。
PDASは、RDREと通常のジェットエンジンを融合させたコンバインドサイクルエンジンを開発。今回実証実験に成功した。実用レベルの推力を達成したとしている(ジェットで1.6kN、ロケットで5kN)。
ジェットとロケットの切り替えは大きく3つの方式が研究、実用化されており、PDASは、より実用化に近づけるためにコンバインドサイクルを選択した。これまで培ってきたデトネーション技術で簡素でコンパクトという、中空円環型のロケットエンジンを新たに開発して、ジェットエンジンと融合(混成)させている。
ジェットエンジンの航空機では飛行できない、大気が薄い高度20km以上の高高度でも飛行できるようになる。同時にマッハ5(時速約6120km)以上の極超音速で飛行できるという。混成方式であることから、理論上はどのジェットエンジンにもロケットエンジンを追加できると説明する。
今回の開発について、PDASは名古屋大学を含めた5大学によるTeam.Dの技術支援の成果と説明。「新あいち創造研究開発」(2023年度)から資金が提供された。同社は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「高頻度往還飛行型宇宙輸送システム」事業者に2022年12月に選ばれている。