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【実写】これがデブリ化した「H-IIA上段」–アストロスケール「アドラスJ」が近接撮影

2024.04.26 16:20

小口貴宏(編集部)

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 日本由来の巨大スペースデブリ「H-IIAロケット上段」を、後方数百mから撮影された画像が公開された。宇宙ベンチャー「アストロスケール」の商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」(アドラスJ)が撮影した。

 同デブリは2009年に打ち上げられたH-IIAロケット15号機の第2段で、全長約11m、直径約4m、重量約3トン。温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を軌道投入した後にデブリとなった。

 ADRAS-Jは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が推進する商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)の「フェーズ1」を受託する形でアストロスケールが開発を進め、2024年2月18日に打ち上げられた。

 フェーズ1ミッションでは、最終的に「H-IIA上段」に人が手を伸ばせば届く距離まで接近し、デブリ全体の写真や動画の撮影を目指している。長期間軌道を漂うデブリの劣化状況などを詳細に調査することで、実際にデブリを捕獲して大気圏に再突入させる次期ミッションCRD2「フェーズ2」に役立てる。

「捕獲に向けた貴重な成果」とJAXA

 軌道上に長期間存在するデブリの運動や損傷・劣化がわかる映像の取得は世界的にも貴重で、今回の画像はその最初の成果となる。

 同デブリの姿勢についてJAXAはこれまで、理論的な研究から「重力傾斜トルクの採用によって地心方向を中心とした振り子運動をしている」あるいは「前者の極端なケースとして地心方向に沿った直立姿勢をとっている」と推測していた。また、光学観測からは後者の「地心方向に沿った直立姿勢」をとっている可能性が高いと見られていた。

 今回撮影した画像によって、実際に地心方向に沿った直立姿勢をとっていることを確認したという。この姿勢データは実際にデブリを捕獲する「フェーズ2」で重要となる。

断熱材の変色も「想定通り」

 また、JAXAはロケット表面に使われている断熱材について、筑波宇宙センターの紫外線照射設備を用いて加速試験的にサンプルの長期照射試験を実施し、打ち上げ直後はオレンジ色だったものが、10年以上の期間を経て軌道上の強い紫外線によって濃い茶色に変色していると想定していた。今回の画像によってそれが裏付けられ、推測の妥当性を確認したという。

 このような表明材料の劣化状況は、ランデブーや近傍運用を実施する搭載光学センサーの測定可能距離数に影響するため、姿勢運動と同様に、実際にデブリする捕獲「フェーズ2」ミッションで重要になるとしている。

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