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宇宙科学研究所の國中所長、米航空宇宙学会の名誉会員に–-SLIM着陸成功での辛口評価も話題に
2024.02.09 15:50
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所(ISAS)は2月9日、所長の國中均(くになか・ひとし)氏が米航空宇宙学会(American Institute of Aeronautics and Astronautics:AIAA)の名誉会員(Honorary Fellow)の称号を授与されたと発表した。
ISASによると、AIAAは世界最大の航空宇宙工学の学会であり、航空宇宙の発展に長く貢献し、顕著な功績がある人物を名誉会員として選出するという。國中氏は以下のようにコメント。
AIAA Honorary Fellowsは、AIAA称号の最上位であり、1932年に第1号としてライト兄弟の弟Orville Wrightに授与され、それ以来2023年までに238人が授与されているそうです。
Honorary Fellowのリストを眺めますと、
Joseph Ames(1934)、Neil Armstrong(1971)、Richard Battin(1990)、Donald Douglas(1936)、Charles Draper(1958)、Hugh Dryden(1939)、Leroy Grumman(1951)、George Lewis(1940)、Glenn Martin(1937)、James McDonnell(1968)、John Northrop(1969)、Ludwig Prandtl(1933)、Wernher von Braun(1970)、Theodore von Kármán(1936)
などとNASA(米航空宇宙局)のフィールドセンター名や宇宙航空企業名として冠したり、教科書で見覚えのある流体力学や宇宙工学のレジェンドの方々が列挙されています。日本人ではただお一人、谷一郎先生が授与されています。「For development of electric propulsion to acquire the first material from an asteroid and work on high voltage systems in space」
との題にての授与に際し、身に余る栄誉に浴し心より光栄に感ずるとともに、身の引き締まる思いです。これまで支えてくれた多くの仲間と関係者の方々に深く感謝申し上げます。
称号の名に恥じないよう、宇宙航空、宇宙科学の振興に精進したいと存じます。
https://www.isas.jaxa.jp/topics/003679.html
國中氏は1960年生まれ。1983年京都大学 工学部 航空工学科を卒業後、1988年に東京大学 大学院 工学系研究科 航空工学専攻 博士課程を修了し、当時文部省傘下だった宇宙科学研究所に着任している。
ISASではマイクロ波を利用したイオンスラスタを研究、小惑星「イトカワ」からの試料(サンプル)を回収した小惑星探査機「はやぶさ」のマイクロ波イオンスラスタを開発したことでも知られている。
2012年に「はやぶさ」の後継である「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーを経験。2015年にJAXAの宇宙探査イノベーションハブ長に就任。2018年からISASの所長を務めている。
國中氏は、「小型月着陸実証機(SLIM)」が月に着陸したことを確認した直後に開かれた記者会見で「ギリギリ合格の60点」とコメント。SLIMの詳細が判明した記者会見でも「63点」という辛口の評価を据え置いた。
好きな言葉は、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の技師長である真田志郎の名台詞「こんなこともあろうかと」。
関連リンク
ISAS発表
AIAAプレスリリース