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日本主導のX線衛星「XRISM」が捉えた「銀河団同士が衝突する様子」–JAXA公開【画像アリ】

2024.01.05 15:43

飯塚直小口貴宏(編集部)

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月5日、X線分光撮像衛星「XRISM」(クリズム)の初期観測で撮影した画像を公開した。

 2023年9月に種子島宇宙センターから打ち上げられたXRISMは、銀河団や宇宙の大規模構造の解明を目的としたX線分光撮像衛星だ。欧州や米国の宇宙機関との協力のもと、JAXA主導で開発した。

 従来のX線衛星よりも格段に広い観測視野が特徴で、地球から見える満月より広い38分角四方を一度に観測できる。従来は一度に銀河団の中心部分しか観測できなかったが、XRISMでは銀河団の全体をワンショットで収められるため、X線天文学に革新をもたらすと期待されている。

 今回の初期観測では、10月14日〜24日にかけて、搭載する軟X線撮像装置「Xtend」を用い、地球から約7億7000万光年で銀河団同士が衝突している「Abell 2319」を観測。X線画像取得に成功した。

XRISMで撮影した2つの銀河団が衝突している様子。画像は可視光とX線の観測を重ねたもので、紫色で表したのがXtendで取得したX線画像(提供=JAXA)

 また、12月4日〜11日にかけては軟X線分光装置「Resolve」を用い、大マゼラン星雲にある超新星残骸(星の爆発の痕)「N132D」を観測。精細なX線スペクトルの取得にも成功した。

大マゼラン雲にある超新星残骸N132Dのスペクトル。太陽系からの距離は約16万3000光年。白色で示したスペクトルはResolveで取得したもの。灰色で示したスペクトルはX線天文衛星「すざく」で取得したもの(提供=JAXA)

 XRISMは2024年2月から定常運用に移行し、本格観測を開始する予定だ。

 なお、現時点では軌道投入後に開放するはずだった検出器の保護膜を開けていない状況で、観測できるスペクトルに制約があるという。開放できない場合でも観測への影響は限定的だとしているが、今後も保護膜の開放に取り組むとしている。

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