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人工衛星の「リース」と「二次利用」の事業化でコンセプト共創–JAXAなど
2023.12.21 15:31
SMFLみらいパートナーズと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、衛星の「リース」と「二次利用」の事業コンセプト共創で覚書を締結した。新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の枠組みで進める。12月21日に発表された。
SMFLみらいとJAXAは、SMFLみらいが持つリースビジネスで培った物件の所有や価値を評価するノウハウと、JAXAが持つ衛星の信頼性や健全性評価に関する技術を組み合わせることで、衛星のリース市場の形成と二次利用市場の創出に向けた事業コンセプトを共同でつくる。
衛星のリース事業は、リース事業者がメーカーから衛星を購入し、運用事業者に賃貸する仕組み。初期投資を低減し、迅速な事業開始を支援できれば、新規参入が促進され宇宙産業が拡大できるとみている。
衛星の二次利用市場は、契約終了や初期目的達成後の衛星を新たな所有者に引き渡し、運用を継続する仕組み。二次利用市場が形成されることで、衛星の持つ将来価値(残存価値)に着目し、衛星の取得価額から残存価値を差し引いた部分をリース料に設定するオペレーティングリースを提供できる。将来価値のリスクは、リース事業者が原則負担するため、運用事業者は低いリース料で衛星を利活用できるとしている。
衛星のリース市場と二次利用市場の形成には、衛星データなどの利用者の拡大と同時に、軌道上にある衛星の適切な評価方法、リスク管理手法の確立、法務や会計、税務面での整理が必要になる。
今回の共創では、リース事業と二次利用事業のビジネスモデルを設計し、実現可能性調査(フィージビリティスタディ)も進める。衛星データ利用者との連携、宇宙産業のサプライチェーンとの連携など、宇宙産業に参入する新たなプレーヤーを支える仕組みづくりも検討する。
SMFLみらいによると、2022年に軌道上に打ち上げられた衛星などの機体数は過去最大の2368機、この10年で約11倍に増加しているという。そのうち商業衛星は2042機、2019年以降顕著に伸びている。日本でも今後10年間で合計280機以上の商業衛星の打ち上げが計画されており、観測通信分野での機体数増加が予測されている。
一方で衛星の開発、製造、打ち上げなど初期投資に関するコストは低下傾向にあるが、衛星を利用したい民間事業者にとっては依然として大きな課題として認識されている。衛星を利活用する需要を支えるための課題解決手法の開発と確立が求められているとしている。
衛星の二次利用については、JAXA職員が宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2019」で発表し、評価されている。
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SMFLみらいプレスリリース(PDF)