ISSでの生活向けに開発した肌着、長期滞在中の古川聡宇宙飛行士が直用

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ISSでの生活向けに開発した肌着、長期滞在中の古川聡宇宙飛行士が着用

2023.12.14 08:30

飯塚直

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 肌着や靴下などを製造、販売する健繊(東京都新宿区)は12月13日、肌着である「HIDAMARI SPACE DRY-WEAR」と「HIDAMARI Qomolangma 8848」の2製品について、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の宇宙飛行士、古川聡氏が着用を開始したと発表した。

 同社は、エベレスト登山隊も使用した肌着「ひだまり」シリーズであれば、宇宙飛行士の“生活の質(QOL)”向上に役に立つという強い想いから、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提供する、宇宙生活の課題から宇宙と地上の双方の暮らしをより良くするビジネス共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」へ参画。JAXAの「第2回宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」で2021年11月にISS搭載候補品として選定されていた。

 健繊は「地球で一番高いエベレストを制したひだまりが今度は大気圏を破り宇宙へ」というスローガンのもと改良を重ね、SPACE DRY-WEARとQomolangma 8848を開発、ISSに搭載されている。

 ひだまりシリーズは、生地が二重構造や三重構造となっており、肌に接する側にダンロンと呼ばれる特殊素材を採用。透湿性に優れたダンロンは汗を外部に放出。肌に接する側は常にサラサラ感があり、快適に過ごせるという。消臭や抗菌の機能も付与され、汗をかいた後でも衛生的に着ることが可能。生地の製造から縫製、裁断、検品はすべて国内で行われている。

 宇宙生活では、筋肉の萎縮や骨密度の低下を防ぐため、抵抗運動と有酸素運動を実施する必要がある。地上であれば流れる汗が、宇宙では汗が流れず、肌にまとわりつくことで不快な状況になり、毎度汗を拭き取る必要が出てくる。

 加えて、宇宙では洗濯ができず、持って行ける服の数も限られている。こうした状況でSPACE DRY-WEARは宇宙での運動時に使用され、古川氏から「汗の吸収がよく着心地がいい、洗濯せずに風通しのいい場所に干しているだけで何日か同じ服を着ても快適に過ごせており、とてもありがたい」という感想が得られたという。

 SPACE DRY-WEARの編地の表面には、銀イオンを保持したアクリル原綿と綿を混紡することで抗菌性能をもたせた「金魚Ag」を使用。宇宙滞在時での臭い問題の解決も目指している。

 Qomolangma(チョモランマ) 8848は、エベレスト登山隊でも実証されている編地を使用。健繊最高レベルという暖かさを持つとしており、空気層で体温を保持する、ひだまりを使用することで、宇宙飛行士を冷えから守るものになるという。

 Qomolangma 8848を実際に着用した古川氏は「ISSの中は環境制御システムのおかげで温度は1年中22~23度程度に管理されています。この気温をどう感じるかは宇宙飛行士の中で個人差があり、私は夜寝ている間寒く感じやすいため当製品のおかげで暖かく、快適に過ごせております」との感想が得られたとしている。

 SPACE DRY-WEARは量産版が7月から販売を開始している。

採用された製品(出典:JAXA)
採用された製品(出典:JAXA)

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健繊プレスリリース(@Press)

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