ニュース
7.5TeVもの宇宙線電子のエネルギースペクトルを測定–加速源の超新星残骸を特定へ
2023.12.06 16:59
早稲田大学(早大)などによる研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)の機器で得られた7年以上にわたる宇宙線の観測データを用い、7.5テラ電子ボルト(TeV)という高いエネルギーを持つ宇宙線電子のエネルギースペクトル測定に成功した。この7.5Tevという値は、スペクトルを測定できた宇宙線電子として世界最高のエネルギー値だとしている。
銀河系内を起源とする宇宙線(銀河宇宙線)は、超新星爆発にともなう衝撃波加速で加速されて地球に飛来すると考えられている。ただし、伝搬中に星間磁場で進路が曲げられるため加速領域の特定が難しく、加速や伝播の機構の理解があまり進んでいないとされている。
1TeVを超える高エネルギーを持つ電子の場合、陽子や原子核と違って質量が小さく、伝播中に自身のエネルギーの2乗に比例してエネルギーを失う。そのため、地球近傍にある伝播時間の短い加速源からしか地球に到達できず、観測できれば加速源の候補天体の特定につながるという。
しかし、高エネルギー電子は到来頻度が少なく長期間の観測が必要なことと、1000倍以上存在する陽子との選別が可能な検出器による測定が必要なため、これまで観測例はほとんどなかったとしている。
研究グループはこの問題を解決するため、ISSの日本実験棟「きぼう」に搭載された高エネルギー電子・ガンマ線観測装置の宇宙線電子望遠鏡「Calorimetric Electron Telescope(CALET)」を使用。CALETは、高エネルギー電子の観測を主目的とする検出器であり、電子を高精度に選別できるうえ、エネルギースペクトルの測定分解能が高い。
7年以上にわたる観測で得られたデータを蓄積し、電子と陽子の選別精度を高めた結果、7.5TeVという電子宇宙線のエネルギースペクトルを測定できた。このスペクトルは、高エネルギー領域で地球近傍の電子加速源候補である超新星残骸の寄与を示唆しているそうだ。
観測を今後も続けることで、宇宙線の加速源を初めて直接的に同定できる可能性が高まるという。
関連リンク
早稲田大プレスリリース