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日本の探査機「SLIM」、1月20日に月面着陸へ–JAXA発表
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月5日、日本の小型月着陸実証機「SLIM」(スリム)の月面着陸を2024年1月20日に実施すると発表した。
SLIM(スリム)は、日本初の月面着陸をめざす実証機だ。国産基幹ロケット「H-IIA」47号機によって9月7日に打ち上げられた。月面着陸に成功すれば日本初となり、世界でも米国、旧ソ連(ロシア)、中国、インドに続く5カ国目の成功となる。
発表によると、日本標準時の1月19日(金)22時40分頃に軌道高度の変更を開始し、1月20日午前0時ごろに着陸降下を開始。午前0時20分ごろに月面着陸を達成する計画だ。なお、降下を開始してからは着陸を中断して元の軌道に戻ることはできない。
世界初「誤差100m」のピンポイント着陸技術を実証
なお、SLIMにはユニークな特徴がある。それは従来の「降りやすいところ」ではなく「降りたいところ」に降りる技術を搭載する点だ。
SLIMでは、着陸地点の誤差が「100m以内」というピンポイント着陸技術を実証する計画だ。従来の月惑星着陸の誤差は数km程度であることから、JAXAは「着陸誤差の桁が1つ少ない。他に類を見ない高精度着陸技術だ」と胸を張る。
着陸降下開始時、SLIMは月面からの高度1万5000mを時速6400kmで飛行している。その状態から強い減速を実施し、約800km先にある半径100mの円内を狙って着陸を目指す。
JAXAの宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトチームでプロジェクトマネージャーを務める坂井真一郎氏は「新千歳空港の上空を飛行機の何倍という猛スピード(時速6400km)で飛行している状態で、20分後に甲子園球場にピタッと着陸するようなもの」と説明する。
ピンポイント着陸技術の実現にあたっては「画像照合航法」と「自律的な航法誘導制御」を新たに導入した。これによって着陸シークエンスはSLIMの完全自律制御となり、JAXA側の運用は各種テレメトリデータをモニタリングするだけだという。
また、SLIMは超小型月面探査ローバー「LEV-1」、および変形型月面ロボット「LEV-2」の2つの子機を搭載している。両機とも、SLIMの月面着陸後に月面に展開される。展開後は月面上からSLIMを撮影し、ピンポイント着陸の成否を判断する材料とする。
また、SLIM本体はマルチバンド分光カメラを搭載しており、着陸後に「月のマントル由来の岩石」を分光計で分析し、地球のマントルと比較することで、月の起源として有力視される「ジャイアント・インパクト説」を検証する。