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なぜ台湾企業が北海道でロケットを打ち上げるのか–見えてきた日本の「地の利」
2023.11.30 13:22
台湾のロケット開発企業Taiwan Innovative Space(TiSPACE)の日本法人であるjtSPACEは、2024年中旬にも北海道の大樹町でサブオービタル(準軌道)ロケットを打ち上げる。
jtSPACEが北海道で打ち上げるロケットは、全長11.4mの2段式で、液体燃料と固体燃料のハイブリッド方式推進系を採用する。また、軌道打ち上げが可能なロケットの開発も視野に入れている。
「地元が歓迎」「さまざまな軌道に対応可能」
なぜ台湾企業である同社が日本でロケットを打ち上げるのか、同社で宇宙開発室 室長を務める賴宥叡(ライ・ユウエイ)氏に尋ねると、次の回答を得た。
「台湾では大学などの研究機関による打ち上げは可能だが、商業用の射場が無い。我が社は台湾唯一のロケット開発企業なので政府と交渉はしているが、台湾では商業打ち上げを見据えた法整備も追いついていないのが現状だ。そこで射場を国外に求め、北海道の大樹町に行き着いた」(賴氏)
賴氏は続けて「大樹町の射場の方々は対応が丁寧で我々を歓迎してくれた。地元の方々もロケットの打ち上げを歓迎している」とも述べた。北海道と大樹町は、射場を中心に産業集積や街づくりまでを見据えた「北海道スペースポート」(HOSPO)に取り組んでおり、宇宙産業の育成に積極的だ。また、HOSPOの周辺にはロケット開発ベンチャーであるインターステラテクノロジズの拠点もある。
さらに「将来ロケットを軌道に打ち上げる場合に、(大樹町の射場が)さまざまな軌道に対応できる点も決め手だった」という。大樹町の射場の東側と南側は海で開けており、東向き打ち上げによる地球低軌道(LEO)、南向き打ち上げによる極軌道への衛星投入に適している。
大樹町に限らず、太平洋に面する日本はロケット打ち上げの適地とされる。jtSPACEによる打ち上げは、日本がそうした「地の利」を生かしてグローバルの商業宇宙開発で存在感を示す好例の1つになりそうだ。