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航空自衛隊、「宇宙安保」でスタートアップとコラボ模索–滑走路や航空機の提供も

2023.11.29 07:50

小口貴宏(編集部)

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 防衛省 航空幕僚監部 防衛部 事業計画第2課で課長を務める南賢司氏は11月18日、宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2023 Year-End」に登壇。日本における宇宙安全保障(宇宙安保)の現況、そして民間とのコラボレーションの必要性について説明した。

防衛省 航空幕僚監部 防衛部 事業計画第2課で課長を務める南賢司氏

宇宙利用、軍事と民間の境が曖昧に

 南氏は冒頭「宇宙は国力をめぐる地政学的競争の主要な舞台になりつつある。21世紀は宇宙の利用が地球での軍事的優位性にほぼほぼ直結する」と述べた。

 また「周辺国が、我が国の上空を通過して光学やSARや電磁波などのセンサーを使って情報収集する衛星の数を急激に増やしている。衛星を無力化する攻撃手法も手に入れている。これもあって宇宙の脅威とリスクの拡大が指摘されている」と続けた。

航空自衛隊の宇宙安全保障への取り組み
衛星を無力化する攻撃手法

 一方「安全保障は軍事オペレーションだけでなく、経済力や政治外交力、文化力、いろんな力の総合体で達成される。我々はその一部でしかない」とも指摘。日本の宇宙安保には民間事業者との協力が必要との認識を示した。

 具体的な事例としては、米宇宙軍が民間事業者とオペレーションを展開する「Joint Task Force-Space Defense Commercial Operations Cell」(JCO)などを紹介した。

 南氏はまた「民生衛星が安全保障目的で使われるようになった今、技術的なデュアルユース性から、民間と軍事の境がわかりにくくなっている」と指摘。こうした曖昧さを「戦略的に使っている国もある」として「我々もしっかり考える必要がある」とした。ウクライナ戦争では、衛星ブロードバンドの「Starlink」や民間事業者の衛星画像が戦況に大きな影響を与えた。

 また「安全保障とビジネスが両立する環境をいかに構築していくかが重要。官民総合力による実証力の向上が求められている」とも述べた。

宇宙領域把握(SDA)の取り組み

 南氏はまた、宇宙領域把握(Space Domain Awareness:SDA)の取り組みについても言及した。

 SDAとはスペースデブリや衛星の軌道などを把握する宇宙状況把握(Space Situational Awareness:SSA)を拡張した概念で、衛星の意図や能力、そして衛星の運用を支える地上や海上インフラまで把握することを目指す。防衛省では2020年5月から宇宙作戦隊を編成し、2022年3月から宇宙作戦群として約200人がSDAを担当している。

 また、SDAの概念に加えて、実際のオペレーション遂行や、民間力の活用なども考慮した「ビヨンドSDA」にも取り組んでいるという。また、不法な宇宙活動や、攻撃にさらされる民間衛星の防護なども考慮する必要があるとした。

航空自衛隊の滑走路や航空機の提供も

 南氏はまた、10月に東京・港区に開設した「宇宙協力オフィス」にも触れた。同オフィスは民間事業者などと意見交換するための事務所で、「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」にあるシェアオフィス「CIC Tokyo」(東京都港区)内に開設された。

 同オフィスについて南氏は「従来は秘密保持の観点から自衛隊と民間企業の連携はあまりされてこなかったが、自衛隊だけでは安全保障は支えきれない。1国だけでもなんとかならない。そこで多国間連携や官民連携は不可欠なことから、民間との情報交換の場として開設した」と説明した。

 「皆さんに認識していただきたいのは、我々は内閣府や経産省ほど潤沢ではないが、それなりに使える予算はある。しかも広い滑走路や基地があり、実証実験の場として活用していただく航空機もあるので、いろいろな観点でみなさんと協力できるのではないかと思っている。まずはお話をさせていただきたい」(南氏)

 南氏は自衛隊において最新の4脚ロボを試験導入した点にも触れ「新しいものをどんどん取り入れるマインドセットに我々はなっている」とも付け加えた。

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