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UCC上島珈琲と国際航業、コーヒー栽培に衛星データ活用–生育診断指標など開発
2022.06.01 07:45
UCC上島珈琲(神戸市中央区)は5月31日、国際航業(東京都新宿区)と共同で応募して採択された「内閣府令和3年度 課題解決に向けた先進的な衛星リモートセンシングデータ利用モデル実証プロジェクト」でコーヒー栽培における衛星データ活用の有効性が明らかになったと発表した。
UCC上島珈琲の説明によると、世界のコーヒーの市場規模はおよそ300億ドル(生豆取引額)と推定されている。地球温暖化が進行すれば、例えば既存のアラビカコーヒーだと生産適地は2050年までに50%に減少する可能性があると指摘されている。そのため、既存の生産地をモニタリングする市場ニーズは、今後拡大していくとUCC上島珈琲は説明する。
コーヒー生豆は、国際的に取引されている最も高価な農作物のひとつであることから、生産に関わるリスクを迅速に把握することが重要と指摘。コーヒー栽培に必要とされる、一緒に植えて栽培する日陰となる木である“シェードツリー”の存在により、生物多様性保全や二酸化炭素(CO2)吸収が期待できるなど、コーヒー栽培は気候変動の緩和に貢献できるという側面もあるとしている。
そこで、UCC上島珈琲と国際航業は気候変動リスクの管理と持続可能な調達の実現を目指して、宇宙関連技術によるコーヒーの生育診断指標の開発と気候変動緩和指標の開発を実施した。
その結果、全ての実証項目で期待する成果を上げることができ、コーヒー栽培における衛星リモートセンシング技術の有効性が明らかになったという。
特に、コーヒーの活性度を示す指標である収量や品質、病気などの特定に成功。また、農園周辺の植生とコーヒーとでは光の反射特性に違いがあることが明確になった。
同実証の成果を受け、両社では、衛星画像を活用したコーヒーの活性度評価をベースにした遠隔地からの農園管理、シェードツリーのモニタリングによる気候変動に対する取り組みを実現できると考えているという。
両社は今後、現地政府や大規模生産者に対して実証成果を用いたコンサルティングを提供するビジネスの早期実現に向けて、同実証で開発した指標の精度向上を図る取り組みを共同で行う。
気候変動や世界的な感染症などによる環境の変化に迅速かつ柔軟に適応し、次世代型のコーヒー栽培を通じて、森林・生物多様性の保全、気候変動への対応、農家の栽培支援を推進。持続可能なコーヒー産業の発展への貢献、そして持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいくという。
欧州宇宙機関(ESA)などが運用する「Sentinel-2」(分解能10m)と米Maxar Technologies(旧DigitalGlobal)が運用する「WorldView-2」「WorldView-3」(分解能0.7m)の光学衛星のデータを活用した。地上データとして生豆の収量、気温や降水量、植え替えなどの情報を活用した。
同プロジェクトは、衛星リモートセンシングデータを活用した先進的なソリューションの効果を実証し、モデルとなる成功事例の創出を図り、その普及や横展開などによる衛星リモートセンシングデータの利用拡大につなげることを目的とした内閣府公募(内閣府宇宙開発戦略推進事務局)の実証プロジェクト。
気候変動による栽培環境の変化や新型コロナウイルス感染症の影響により、コーヒー栽培でも遠隔地から農園の情報を把握することができる衛星リモートセンシング技術の活用ニーズが高まっているという。