アストロスケール、宇宙ゴミ除去技術の実証衛星をニュージーランドに出荷

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アストロスケール、宇宙ゴミ除去技術の実証衛星をニュージーランドに出荷

2023.10.04 16:45

飯塚直

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 アストロスケール(東京都墨田区)は10月4日、2023年度内のミッションを予定している商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)のニュージーランドへの出荷を完了したと発表した。

 同社は、大型デブリ除去などの技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)プロジェクトのフェーズ1の契約相手方として選定され、ADRAS-Jを開発している。

 今回のミッションは、軌道投入後に、対象となる「H-IIA」ロケットの上段に接近、近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations:RPO)を実証し、長期間放置された対象の運動や損傷、劣化といった状況を撮影する。デブリに安全に接近するとともにデブリの状況を詳細に把握することは、デブリ除去を含む軌道上サービスで不可欠な要素と位置付けている。

 世界初の試みである、今回のミッションの対象物体であるH-IIA上段は、自らの位置情報を発信していない“非協力物体”。そのため、RPOで必要な軌道での正確な位置は不明。対象物体のおおよその位置は地上局からの観測データをもとに判断するしかない。

 しかし、その地上からの観測による位置情報は、軌道上での観測ほど正確ではないという。その限られた情報をもとに距離を詰めていく必要がある。

 RPOミッション成功の鍵となるナビゲーションセンサーやランデブー機能など、強化された技術を搭載。RPOや航法(ナビゲーション)に最適化したセンサーやカメラを超長距離を含む複数の距離範囲で使用する。

 センサー群のシームレスな切り替えもミッション成功のための重要な要素という。例えるなら、高速で移動する乗り物に乗りながら、特定の物体を望遠鏡、双眼鏡、虫眼鏡を切り替えて観察するようなものと説明している。

 ADRAS-Jは、相対的に自らの位置を制御するための斜め向きの8本の推進器(スラスタ)と、効率的に大きな推力を生んで大きく軌道を変更するための真っ直ぐな4本のスラスタを使い分けることでダイナミックかつ繊細な動きが可能という。本体サイズは、約830×810×1200mm(太陽光パネル展開時の幅は約3700mm)。重量は約150kg。

 ニュージーランドのマヒア半島にあるRocket Labの第1発射施設(Launch Complex 1)からロケット「Electron」で打ち上げる予定となっている。ADRAS-Jは、アストロスケールとマーケティングパートナーシップを締結している郵船ロジスティクス(東京都品川区)が輸送する。

 ADRAS-Jは当初11月からの打ち上げが予定されていたが、9月19日にRocket LabがElectronの打ち上げに失敗。現時点でのADRAS-Jの具体的な打ち上げ日時は決まっていない。

 フェーズ1のミッション完了期限は2024年3月末となっているが、アストロスケールホールディングス創業者で最高経営責任者(CEO)を務める岡田光信氏は「2024年3月末までに動こうと思っている」との意向を明らかにしている。

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アストロスケールプレスリリース

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