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アストロスケールの「ADRAS-J」、打ち上げ日の発表延期–RocketLab失敗が影響

2023.09.26 12:32

小口貴宏(編集部)

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 日本の宇宙ベンチャーであるアストロスケールは9月26日、同日を予定していた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」の打ち上げ日時の発表を延期した。

アストロスケールホールディングス創業者で最高経営責任者(CEO)を務める岡田光信

 ADRAS-Jは、Rocket Labのロケット「Electron」を用い、ニュージーランドのマヒア半島にある射場から11月に打ち上がる予定だった。しかし、9月19日にRocketLabがElectronロケットの打ち上げに失敗したため、日時を発表できなくなったという。

ADRAS-J

 ADRAS-Jは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が推進する商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)の「フェーズ1」を受託する形で開発が進められている。

 フェーズ1のミッション完了期限は2024年3月末となっているが、アストロスケールホールディングス創業者で最高経営責任者(CEO)を務める岡田光信氏は「2024年3月末までに動こうと思っている」と述べ、期限に間に合わない可能性には言及しなかった。

日本由来の巨大デブリ「H-IIA上段」に近接観測を予定

 ADRAS-Jは、日本由来の巨大スペースデブリ「H-IIA上段」に手を伸ばせば届く距離まで接近し、同デブリ全体の写真や動画の撮影を目指している。

 なお、ほとんどのデブリは自らの位置情報をGPSデータで発信していない、いわゆる「非協力物体」であり、最終接近には可視光カメラ、赤外線カメラ、LiDARという3種類のセンサーを用いた相対航法を用いる。また、地上観測などの結果、振り子運動をしている可能性があるという。そのため、手を伸ばせば届く距離まで接近するには、推進器(スラスター)でデブリの動きに追従する必要があるなど、繊細な制御が求められる。

 同ミッションが成功すれば、実際にデブリを捕獲して大気圏に再突入させるCRD2の「フェーズ2」実施の足がかりとなる。

 

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