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ブラックホールが自転していることを確認–ジェット噴出方向が11年周期で変化
2023.09.28 15:32
国立天文台(NAO)などの研究チームは、おとめ座内の銀河「M87」中心にあるブラックホールが自転していることを確認した。
M87の中心には、人類史上初めて画像で捉えられた巨大ブラックホールが存在する。ブラックホール本体は見えないが、周囲のガス円盤やブラックホールとの相互作用で噴出されるジェットは捉えられる。
ブラックホールが自転しているかどうかは、観測の困難さから明確に分かっていなかった。仮にブラックホールが自転していて、その自転軸とガス円盤の回転軸が傾いていると、一般相対性理論の効果によってジェットの噴出方向が周期的に変化し、歳差運動(「すりこぎ運動」「首振り運動」などとも呼ばれる)が生ずると予想されている。
研究チームは、東アジアVLBIネットワーク(East Asian VLBI Network:EAVN)などの観測網を使い、M87の中心から噴出するジェットの様子を調査。過去20年以上にわたる観測で得られた170枚の電波画像を分析したところ、ジェットの噴出方向が約11年周期で変化していると判明した。
観測結果と理論シミュレーション結果を比べ、この歳差運動が巨大ブラックホールの自転に起因する現象であると確認。自転するブラックホールが周囲の時空を引きずることでジェットの噴出方向が変わることを、うまく説明できるという。
この研究成果は、M87の巨大ブラックホールが自転していることを示すとともに、強力なジェットの発生にブラックホールの自転が深く関与していることを裏付ける、とした。研究成果は英科学誌「Nature」(2023年9月27日付)に掲載されている。
関連リンク
国立天文台プレスリリース
Event Horizon Telescopeプロジェクトプレスリリース