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日本由来の巨大デブリ「H-IIA上段」捕獲へ第一歩、アストロスケールが新型衛星公開

2023.09.16 10:30

小口貴宏(編集部)

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 航空宇宙研究開発機構(JAXA)が推進するプロジェクト「商業デブリ除去実証」(Commercial Removal of Debris Demonstration:CRD2)。このフェーズIを受注したアストロスケールは9月7日、宇宙ゴミ(スペースデブリ)を近接観測するための実証衛星「ADRAS-J」の実機を公開した。

 CRD2は、日本由来の大型デブリの除去を民間企業に委託するJAXAのプログラムだ。プロジェクト「フェーズI」では、日本由来の巨大デブリであるH-IIAロケット上段への接近観測を目指している。そして、実際にデブリを除去する「フェーズII」に向けたデータ収集を行う。

 ADRAS-JはフェーズI実施に向けて、H-IIAロケット上段に接近して動画を撮影し、対象物体の運動や損傷、劣化がわかる映像の撮影をめざす。

 どの程度まで接近するかは機密扱いとなっているが、デブリ捕獲に向けた接近技術の実証が目的であることから「H-IIA上段にこれまでではありえない距離、手を伸ばせば届く距離まで接近する」と担当者は語る。

ADRAS-J

 H-IIA上段に接近した後は、近接映像を撮影する。デブリの周囲を1周して、H-IIA上段全体の撮影も予定している。なお、前述の通り接近技術の実証が目的であり、捕獲は実施しない。

接近には可視光カメラやLiDARも活用

 H-IIA上段へ接近観測するまでの流れはこうだ。ADRAS-Jが打ち上がったタイミングでは、H-IIA上段まで数千km以上の距離がある。これを数百kmまで縮めるわけだが、その際にはGPSと地上からの観測による絶対航法を用いる。

 その後、数kmまでは可視光カメラを用いて接近する。そして、赤外線カメラに切り替えて数百mまで接近。その後は、光で距離や形などを計測する「LiDAR」を用い「手を伸ばせば届く距離」まで近づく。 

「絶対にデブリに衝突してはならない」

 CRD2実施にあたり、JAXAは選定企業に対し、スペースデブリへの衝突を絶対に避けるよう求めている。

 また、アストロスケールは自社を「宇宙版ロードサービス事業者」と定義し、役目や寿命を終えた衛星を回収しデブリ化を防ぐサービスや、軌道上の衛星の寿命を延長させるサービスの実現を目指している。そのなかで、デブリに衝突することは「JAFのクルマが故障したお客様のクルマにぶつかるようなもので、絶対に避けなければならない」と担当者は語る。

 とはいえ、今回の接近対象となるH-IIA上段は、軌道上で不規則な運動を繰り返している。そのような物体に接近し、周囲を一周して撮影には、対象物体の動きに追従し続ける必要がある。そのため、衛星に搭載される推進器(スラスター)を用いた、緻密な運動制御が必須となる。

 万が一衝突しそうになった場合に備え、ADRAS-Jには8機の通常スラスターに加え、4機の予備スラスターを搭載するなどの冗長化設計を施している。

 CRD2の成功期限は 2024年3月末となっており、ADRAS-Jはそれに合わせて打ち上げられることになる。打ち上げ日の詳細は9月26日に発表される予定だ

 

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