「ダークマター」の小さなゆらぎを検出--3万光年以下で従来の10分の1以下

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「ダークマター」の小さなゆらぎを検出–3万光年以下で従来の10分の1以下

2023.09.11 14:13

佐藤信彦

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 国立天文台(NAOJ)と近畿大学、東京大学、台湾中央研究院の研究チームは、大型電波干渉計「ALMA望遠鏡」による観測で、宇宙空間を漂う「ダークマター」の密度に3万光年以下という小規模な空間的ゆらぎがあることを検出した。

 ダークマターとは、宇宙にある質量の大部分を占めるにもかかわらず、光などの電磁波と相互作用しない物質。光学望遠鏡や電波望遠鏡で直接的な観測ができず、正体は不明だ。

 宇宙空間におけるダークマターの分布は一様ではなく偏りがあるため、その重力で遠方から届く電磁波の経路を変化させ、重力レンズ効果を引き起こす。重力レンズ効果で生じた現象の観測結果から、ダークマターの分布が銀河や銀河団と似ていると判明していた。ただし、もっと小さな規模の分布状況は、詳しく分かっていない。

 研究チームはチリにあるALMA望遠鏡を使い、地球から110億光年先にあるクエーサー「MG J0414+0534」を観測した。クエーサーの観測像は、手前にある銀河の重力レンズ効果で4つに分かれて生ずるはずだが、実際の観測結果はこの銀河の影響だけで計算したものと異なる。

ダークマターの空間的なゆらぎ。明るいオレンジほどダークマター密度が高い。4つに分かれたクエーサーは青白色(出典:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. T. Inoue et al.)

 このことから、途中にある銀河より小規模な複数のダークマターの塊が、銀河とは別の重力効果を生じさせていると判明した。しかも、ダークマター密度の空間的なゆらぎの大きさは3万光年程度で、従来の観測に比べ約10分の1以下という小さなスケールだった。

 研究チームは、この研究成果が「(ダークマターの)正体を解明するための重要な一歩」になるとしている。

今回の観測の概念図。クエーサーから放出された電磁波は、手前の銀河による重力レンズ効果とダークマターによる重力レンズ効果によって、観測地点に届く経路が変化する。銀河による重力レンズ効果のみを考慮した場合と実際に観測された像のズレから、ダークマターの分布を推定することができる(出典:NAOJ, K. T. Inoue)
今回の観測の概念図。クエーサーから放出された電磁波は、手前の銀河による重力レンズ効果とダークマターによる重力レンズ効果によって、観測地点に届く経路が変化する。銀河による重力レンズ効果のみを考慮した場合と実際に観測された像のズレから、ダークマターの分布を推定することができる(出典:NAOJ, K. T. Inoue)

関連リンク
国立天文台プレスリリース
ALMA望遠鏡プレスリリース

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