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三菱電機、宇宙で3Dプリンターで衛星のアンテナを製造する技術を開発
2022.05.19 08:00
三菱電機は5月17日、太陽光と紫外線硬化樹脂を利用して、宇宙空間で人工衛星用アンテナを製造する技術を開発したと発表した。
近年、民間事業者による人工衛星をはじめとする宇宙機器打ち上げビジネスが立ち上がりつつある中、従来の政府機関などが主導する大型の人工衛星だけでなく、研究機関や民間企業が主導する数十cmサイズの小型の人工衛星が登場している。
同社によると、人工衛星のアンテナは高利得かつ、広帯域幅であることが求められ、開口を大きくする必要があるという。しかし、これまでのアンテナは、打ち上げロケットのフェアリング(流線形の覆い)サイズや人工衛星のサイズの制約を受けており、あらかじめ格納可能な大きさで整形するか、折り畳んで格納した上で軌道上で展開していた。加えて、打ち上げ時や軌道投入時の振動や衝撃に耐えられるようにする構造も必須となっている。
同社は、アンテナの部材である支柱やアンテナの角度調整用モーターと共用化した、小型衛星にも搭載可能なフリーフォーム3Dプリンター、真空中で適切な粘度を持ち紫外線による硬化安定性を持つように配合した紫外線硬化樹脂を開発した。
真空中でも安定性を持った新開発の樹脂を3Dプリンターで押出成形し、太陽光の紫外線で硬化させることで、宇宙空間でサポート材が不要なフリーフォーム3D積層造形が低消費電力で可能となったという。
これにより、ロケットのフェアリングサイズや人工衛星のサイズにかかわらず、数十cmサイズの小型衛星でも開口の大きなアンテナが搭載できるようになるという。軌道投入後の振動や衝撃などを考慮したアンテナ構造やアンテナ展開用の部品も不要となるため、人工衛星を軽量化でき、打ち上げコストの低減に貢献できるとしている。
同社では、小型衛星の分野で広く使われている3Uのキューブサット(100×100×300mm)仕様の小型人工衛星での利用を想定した、人工衛星サイズを上回る165mm径のアンテナ反射鏡を大気中で試作。13.5GHzのKu帯(バンド)で23.5dBの利得を確認した。
今後は、開発した技術を発展させることで、人工衛星打ち上げコストを削減。通信や自然観測、センシングといった多様な用途の人工衛星を、これまで以上に利用できることが期待できるという。個人や地域レベルのニーズに応じた衛星画像や観測データをタイムリーに提供できるようになることも見込めるとしている。