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QPS研究所、小型SAR衛星を空中発射式ロケットで打ち上げ–Virgin Orbitと契約

2022.05.09 08:00

飯塚直

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 電波を使用して地表の画像を得る合成開口レーダー(SAR)の小型衛星を開発、運用するQPS研究所(福岡市中央区)は5月6日、米Virgin Orbitと、小型SAR衛星「QPS-SAR」5号機の打ち上げで契約を締結したと発表した。

 QPS-SARは、収納性が高く、10kgと軽量でありながら大型の展開式アンテナを搭載する小型SAR衛星。同アンテナにより、強い電波がさせるほか、従来のSAR衛星の20分の1の質量、100分の1のコストを特徴としている。

 現在は1号機「イザナギ」、2号機「イザナミ」の2機を打ち上げて運用。2021年5月には、2号機のイザナミによる分解能70cmの画像取得に成功していた。

 5号機は、米カリフォルニア州モハーヴェから2023年初頭に打ち上げを予定。高い頻度で地球観測できるように傾斜軌道に投入されるという。

 Virgin Orbitは、地上の固定された発射台からではなく、空中発射式ロケットによる衛星打ち上げを事業とするVirginグループの宇宙関連企業。同システムでは、ロケットを雷雲の発生しない高度10km以上の成層圏まで運んで打ち上げるため、地上の天候に左右されないスケジュール通りの打上げが可能となる。

 2022年1月のミッション「Above the Clouds」では、空中発射システムであるロケット「LauncherOne」と運搬機「Cosmic Girl」でMojave Air and Spaceportから離陸して、7機の衛星を高度500kmの傾斜角45度軌道に投入していた。

 Virgin Orbitにとっては、同システムを使った商業打ち上げの3回目の成功になる。また、地上からの打ち上げシステムでは不可能な西海岸からの独自軌道への初の挑戦は、LauncherOneによる空中発射システムの確かな能力を実証するものになるという。

 QPS研究所は、2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星コンステレーションを構築。地球のほぼどこに対しても、任意の場所を平均10分間隔という準リアルタイムで計測し、その観測データのサービス提供を目指している。

 2022年度には、「イプシロン」6号機でQPS-SARの3号機と4号機を打ち上げ予定であり、続く5号機の準備も進めている。2号機のイザナミで分解能70cmの高精細画像の取得に成功しているが、5号機を含めた3号機以降では、さらに高い分解能を実現するように開発を進めているという。

 QPS研究所は、2005年に福岡で創業された宇宙開発ベンチャー企業。九州大学で20年以上培われた小型人工衛星開発の技術をベースに、国内外で衛星開発や宇宙ゴミ(スペースデブリ)への取り組みに携わってきた名誉教授陣と若手技術者、実業家らが宇宙技術を開発している。また、創業者たちが宇宙技術を伝承し、育成してきた20社以上の北部九州を中心とするパートナー企業によって支えられているという。

(出典:QPS研究所)

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