ESAなど、月面で金属ゴミを再利用する3Dプリント技術--レゴリス混入でも強度を維持

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ESAなど、月面で金属ゴミを再利用する3Dプリント技術–レゴリス混入でも強度を維持

2023.08.10 15:56

佐藤信彦

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 欧州宇宙機関(ESA)などは、月面で金属ゴミを再利用できる3Dプリント技術を開発した。金属ゴミに月の塵(レゴリス)が混入しても、強度が十分な再生品を出力できるという。

 必要な機材を地球から月へ輸送するには、コストがかかる。そのため、月面で活動を長期間続けるには資源を有効活用しなければならない。一つの対策として、使用済みの宇宙船や着陸船からスクラップ金属を回収し、3Dプリンターで有用な別のものに成型し直すアイデアがある。

 ただし、月面は細かい砂のようなレゴリスで覆われており、再利用しようと回収する金属にどうしても付着してしまう。その結果、再成型した金属部品の強度が低下する。

 ESAは、3Dプリント技術を持つオーストリア企業のIncusとLithoz、ドイツの宇宙技術企業OHBの協力を得て、レゴリスが混入しても強度の落ちない技術を研究。「Lithography-based Metal Manufacturing(LMM)」という光造形金属3Dプリント技術を活用して金属の再利用を試みた。

 試験では、リサイクルするチタンと新たなチタンに、体積比で10%のレゴリスを模した粉末を混ぜ、LMMで成型。粉末が入っていても、光硬化用の結合材を適切な比率で加えると、射出成形による金属部品と同等の強度を持つ部品が作れたとしている。

強度は射出成形した金属部品と同等(出典:Incus)
強度は射出成形した金属部品と同等(出典:Incus)

関連リンク
ESAプレスリリース
Incusプレスリリース
Lithoz
OHB


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