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宇宙で地上のエアコンが使えないのはなぜ?–信頼性の高い冷暖房開発へ、ISSで実験

2023.08.09 11:09

塚本直樹

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 将来の宇宙居住施設における信頼性の高い空調装置の開発を目的とした新実験装置が、国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。

 宇宙や他の惑星では、太陽の光が当たっている場所は非常に熱く、一方で光を受けない場所は非常に冷たいなど、極端な温度環境が特徴となっている。また、地上の空調システムは地球の重力を前提として設計されているが、宇宙では重力が弱いために、液体や気体の流れが地上とは異なることから、地上のエアコンをそのまま使うことができない。そこで、このような環境下でも動作可能な信頼性の高い冷暖房が求められている。

 ISSには2021年8月から「Flow Boiling and Condensation Experiment (FBCE)」と呼ばれる装置が設置されており、微小重力化での沸騰に関する実験が行われてきた。

 そして今回、米Purdue大学が開発し、第19次商業補給ミッション(NG-19)としてISSに輸送された新実験装置は、FBCEに2つ目のモジュールを追加する。そして、微小重力下での沸騰と凝縮の仕組みに関するデータを収集し、地上で収集したデータと比較する。両モジュールは2025年まで運用される。

 Purdue大学のIssam Mudawar教授は、「我々は、地球での熱と冷却システムがどのように機能するかについては、100年以上の歳月をかけて理解を深めてきた。しかし、微小重力下でどのように機能するかについては、まだわかっていない」と語っている。

(出典:NASA/Danielle Johnson)

 またこの研究は、宇宙での暖房や空調のシステムの開発だけでなく、宇宙船の動力や推進システムの開発にも貢献する可能性があるとしている。

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Purdue University

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