小型実証衛星2号機「RAISE-2」への電波送信を停止--部品や機器を宇宙で実証

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JAXA、小型実証衛星「RAISE-2」への電波送信を停止–部品や機器を宇宙で実証

2023.04.11 08:00

飯塚直

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月7日、「小型実証衛星2号機」(RApid Innovative payload demonstration SatellitE-2:RAISE-2)について、約1年間の軌道上実証を終え、4月7日午前9時41分にへの電波送信を停止した(停波)と発表した。

 RAISE-2は、「革新的衛星技術実証2号機」の一部として、2021年11月9日午前9時55分に内之浦宇宙空間観測所から「イプシロン」5号機で打ち上げられた衛星。実証テーマ提案者からの要求を受けて衛星を運用し、実証機器の実験データや実験実施時の環境データを提供している。

 RAISE-2で選定された部品や機器の実証テーマを軌道上で実証するために打ち上げられていた。JAXAによると、約1年間の運用を通じ、搭載した6つの部品や機器の実証テーマを実証したという。具体的には以下の通り。

  • ソニー製小型・低消費電力マイコンボード「SPRESENSE」の耐宇宙環境性能評価(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
  • クローズドループ式光ファイバジャイロの軌道上実証(多摩川精機)
  • キューブサット用小型・安価な国産スタートラッカーの商用化に向けた宇宙実証(天の枝)
  • 3Dプリンターで製作する廉価版アンテナ(テレメトリ・コマンド受信用)の軌道上評価(三菱電機)
  • 軽量・無電力型高機能熱制御デバイスの軌道上実証(東北大学)
  • 冗長MEMS IMU(MARIN)の軌道上放射線環境での飛行実証(JAXA)

 ソニーセミコンダクタソリューションズは、今回の実証の成果から他の企業や機関が開発するキューブサットに「SPRESENSE」の搭載が決定、検討され、5機以上のキューブサットで搭載に向けた検討が進められているという。

 多摩川精機は、1軸のみではなく、3軸IMUとしての製品化を推進。天の枝では、姿勢決定機能の正常動作を確認し、精度を評価して、性能を実証した。

 三菱電機は、3Dプリンター製のアンテナが軌道上でも健全に動作することを確認したことから、3Dプリンターを適用した衛星搭載RF(無線周波数)機器の開発を進めるという。

 東北大学は、高熱伝導サーマルストラップについて、共同開発企業が受注生産を開始。商品化に向けた準備を進めている。JAXAによると、共同開発企業が冗長MEMS IMU(MARIN)の販売を開始する予定だとしている。

RAISE-2での実証テーマの主な成果(出典:JAXA)
RAISE-2での実証テーマの主な成果(出典:JAXA)

 革新的衛星技術実証2号は、RAISE-2と8機の超小型衛星やキューブサットの計9機で構成。

 超小型衛星は、可変形状姿勢制御実証衛星「HIBARI」(東京工業大学)、複数波長赤外線観測超小型衛星「Z-sat」(三菱重工業)、宇宙ゴミ(スペースデブリ)捕獲システム超小型実証衛星「DRUMS」(川崎重工業)、多目的宇宙環境利用実験衛星「TeikyoSat-4」(帝京大学)の4機。

 キューブサットは、宇宙塵探査実証衛星「ASTERISC」(千葉工業大学)、速報実証衛星「ARICA」(青山学院大学)、高機能オンボードコンピューター(OBC)実証衛星「NanoDragon」(明星電気)、木星電波観測技術実証衛星「KOSEN-1」(高知工業高等専門学校)の4機。

RAISE-2の軌道上想像図(出典:JAXA)
RAISE-2の軌道上想像図(出典:JAXA)

 革新的衛星技術実証2号機は「革新的衛星技術実証プログラム」の一環として打ち上げられた。同プログラムは、宇宙基本計画にある「産業・科学技術基盤を始めとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化」の一環として、大学や研究機関、民間企業などが開発した部品や機器、超小型衛星、キューブサットに宇宙実証の機会を提供するというもの。部品単位で軌道上実証できる機会としては唯一の機会と説明している。

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