ニュース
学習院大学、全学共通科目「宇宙利用論」を2023年度開講–SpaceBDと共同開発
2022.03.16 08:00
学習院大学がSpace BDと連携し、宇宙空間の利用をテーマとしたカリキュラムの共同開発に向けて協定書を締結した。全学共通科目の「宇宙利用論」として2023年度からの開講を目指す。文理融合の学びに加え、宇宙ビジネスの実践の場も提供することで、新たな人材育成につなげる狙い。
宇宙利用を想定した課題解決には多くの学び
宇宙はこれまで主に探査の対象だったが、その環境や資源を利用する動きが拡大している。例えば、いま着々と進められている月探査計画「Artemis」では、有人宇宙飛行と月面着陸だけではなく、宇宙探査の拠点を(地球ではなく)月に設定しようとしている。また近年では民間企業の宇宙進出、民間人の宇宙飛行も目にするようになってきた。よりいっそう宇宙が身近になる将来、宇宙利用で活躍できる人材育成は今後の重要なテーマとなるのは確実だ。
学習院大学 理学部物理学科教授 渡邉匡人氏は国際宇宙ステーション(ISS)を利用した宇宙環境利用に長らく携わってきた人物でもある。昨今の宇宙をめぐる変化を受け、渡邉氏は「技術的、科学的な側面だけではなく、さまざまな問題が出てくるであろうと感じ、法学部の小塚先生と議論を重ねました。そのなかで、宇宙資源を利用する取り組みが学生の学びに重要かつ有意義なテーマであると気づいてきました」と話す。
宇宙空間や宇宙資源を利用するという前提で、どのような問題が生じるか。その問題から何を優先的に解決すべきかを抽出し、どのように解決するかを考えていくことになる。
「これは学びの要素が非常にたくさんあり、自由に考えることができるテーマである。加えて現在地球にいる、われわれが抱える問題解決にもつながる」と渡邉氏らは考え、理学部だけではなく全学部を対象とした「宇宙利用論」として開講することを目指すことにしたという。
2023年度開講予定の「宇宙利用論」はまだ準備中ではあるものの、現段階では全15回の講義を予定している。宇宙ビジネスの現場の様子、宇宙で使用する機器の技術的な解説、あるいはエンターテインメントや宇宙旅行なども講義内容の候補として挙げられている。また講義だけではなく、ワークを採り入れた実践的なものを予定している。
学習院大学 法学部法学科教授 小塚荘一郎氏は産学連携としたことについて「日本の宇宙産業を代表する会社の1つ、Space BDと連携することで最先端の動きをリアルに伝えることができると考えました」と説明する。
Space BDは2017年に日本で創業し、宇宙ビジネスの発展を目指す企業。2018年5月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)初の超小型衛星放出事業における放出サービス提供事業社に選定された。超小型衛星であれば、宇宙に送り出してくれるということだ。Space BDは教育事業にも力を入れており、今回の連携につながった。
ビジネスプランをアピールするワークショップも
「宇宙利用論」カリキュラムの共同設計は2021年度から既に始まっている。2021年度にはカリキュラム共同設計と同時に、プロトタイプとなる「宇宙ベンチャー概論」セミナーを実施した。加えて宇宙を身近に感じられるような教育体験型イベント「スペース Day(仮)@学習院大学」の企画も並行して進めている。