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JAXAなど、洋上風力発電での適地選定を効率化へ–「超広帯域マイクロ波」を活用

2023.03.14 08:00

飯塚直

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月13日、グリーンパワーインベストメント(GPI、東京都港区)と「超広帯域電波デジタル干渉計(Scanning Array for hyper-Multispectral RAdiowave Imaging:SAMRAI)の洋上風力発電分野利用の検討」に関する協定を締結したと発表した。

 科学技術振興機構(JST)の受託事業「超広帯域アンテナ・デジタル技術を用いたレーダ及び放射計の開発と実証」の一環として行われる。JAXAとGPIの強みを生かし、SAMRAIによる海上風速データを「風の地図」として可視化。洋上風力発電事業での適地選定の効率化に向けた検証を実施していくという。

 SAMRAIは、従来にはない超広帯域での電波スペクトルの観測を可能とし、雲や雨など天候の影響を受けずに精度の高い海上風速を観測できるのが特徴。JAXAによる「超広帯域マイクロ波計測」技術がベース。

 マイクロ波帯のうち、1GHzから41GHzまでの広帯域を単体でカバーできる“超広帯域アンテナ”を活用する。マイクロ波を毎秒280回もの処理速度でデジタルデータに変換できるという“超高速デジタル信号変換技術”と“超広帯域アンテナ”を組みあわせることでSAMRAIを開発している。

SAMRAI観測データの洋上風力発電事業への利用イメージ(出典:JAXA)
SAMRAI観測データの洋上風力発電事業への利用イメージ(出典:JAXA)

 現在は、航空機搭載による技術開発や検証を進めており、2026年度に衛星へ搭載した実証機を打ち上げることを目指して研究開発が進められている。洋上風力のほか気象防災や漁業といったさまざまな分野の事業者に対して、SAMRAIの観測データの提供と社会実装を目指している。

 GPIは、地域の資産や強みとなるようなエネルギーづくりを加速すべく、日本最大規模の陸上風力発電所や石狩湾新港での洋上風力発電所の開発など、最新技術を活用し風力発電の普及拡大を推進している。

「風の地図」のイメージ(出典:JAXA)
「風の地図」のイメージ(出典:JAXA)

 JAXAとGPIは、日本初となる「風の地図」を生かし、エネルギー自給率向上に欠かすことができない風力発電事業の普及拡大を推進。温室効果ガスの削減を目指す政府方針の下、洋上風力発電の主力電源化、日本のエネルギー安全保障を目指した活動を展開していくという。

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