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軽くて速い「Starlink」、災害復旧のゲームチェンジャーに–KDDIがau移動基地局に導入

2023.03.03 11:06

小口貴宏(編集部)

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 KDDIとKDDIエンジニアリングは3月2日、Space Exploration Technologies(SpaceX)の衛星ブロードバンド「Starlink」を利用する車載型および可搬型基地局を、2023年春以降に順次全国に導入すると発表した。自然災害で通信が途絶した地域に展開することで、auエリアの迅速な復旧を図る。

可搬型基地局(800MHz帯の電波を用いて半径数キロ程度をauエリア化できる)
車載型基地局(屋根にStarlinkアンテナを設置している)

 KDDIはこれまでも、バックホール回線に静止衛星を利用した車載型と可搬型の基地局を運用していたが、通信速度が遅い上に、700ms程度の遅延が発生するなど、通信品質が高くなかった。さらに、可搬型基地局の場合、アンテナが約50kgと重く、サイズも大きいため、現地での設置に手間取っていた。

 一方、Starlinkを用いた場合、静止衛星を用いる場合に比べて通信速度が約10倍に向上するほか、遅延も一般的なセルラー通信と遜色のない50ms程度に短縮されるという。さらに、機材の重さは7分の1、大きさも5分の2程度となる。可搬型基地局の場合、被災地に到着してから30分程度で組み立てが完了するという。従来は組み立てに1〜2時間を要していた。

 また、海上から陸地の被災エリアにau回線の電波を飛ばす「船舶型基地局」のバックホール回線にもStarlinkを導入する。静止衛星の場合はアンテナの重量が137kgあり、船舶への運搬にはクレーンを用いる必要があった。一方のStarlinkはアンテナの重量が約7kgで、人力でも運搬可能。KDDIの説明員が「今までなんだったんだ… という感じ」と述べるほどの手軽さだ。

 KDDIは、これら基地局を迅速に被災地へ運べるよう、自衛隊や海上保安庁とも連携。2023年春以降、被災した地域での災害復旧に用いられるという。

被災地で動画を使った情報収集が可能に

 KDDIで執行役員 技術統括本部 副本部長 兼 エンジニアリング推進本部長を務める山本和弘氏は「Starlinkはサイズが小さく運びやすく、通信速度も上がり低遅延。お客様の体験が改善する」とコメントした。

 また、KDDIでネットワーク強靭化推進室室長を務める水田秀之氏は「災害現場での情報収集スタイルが変わり、SNSを使って動画で情報を集めたり発信する人も増えた」とコメント。Starlinkで被災地域に高速なau回線を提供することで、そうしたニーズに対応できるとした。

 また、Starlinkを用いて被災地に高速なau回線を展開することで、例えばau回線に対応するドローンを使って被災地の高精細な映像をリアルタイムで遠隔地に伝送することも可能になるという。

 KDDIはこれまで、災害時の通信途絶対策として、陸(車載型と可搬型基地局)と海(船舶型基地局)からのアプローチを実施していたが、今後は宇宙(Starlink)からの取り組みにも力を入れるとした。

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