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「H3」打ち上げ中止、原因は電源供給系統の異常–3月10日までの打ち上げ目指す
2023.02.24 13:48
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2月17日の打ち上げを直前に中止した新型基幹ロケット「H3」の「試験1号機(TF1)」について、調査報告書「H3ロケット試験機1号機打上げ中止の原因調査について」(PDF)を公表した。現時点では、メインエンジン「LE-9」は正常に着火して推力を発揮したものの、1段エンジン用の電源供給系統で異常が発生し、打ち上げが自動的に中断された、と判明している。
TF1は、種子島宇宙センターから2月17日午前10時37分55秒に打ち上げる予定で作業を進め、その約6秒前にLE-9をスタートさせたが、固体補助ロケット「SRB-3」に着火せず打ち上げられなかった。当日午後の記者会見でJAXAは、SRB-3に着火しなかった直接の原因を、SRB-3への着火信号が送出されなかったため、と述べていた。
その後の調査で、新型エンジンであるLE-9に異常はなく、1段エンジン用電源供給系統で何らかの問題が生じたと判明した。
JAXAの説明によると、打ち上げ6.3秒前にLE-9をスタートさせた後、着火を確認し、推力が90%に達する打ち上げ条件をクリアしていた。ところが、1段エンジン用電源供給系統での異常を1段機体制御コントローラーが検知したため、SRB-3点火信号を送出せず、LE-9も停止させ、打ち上げ直前に安全に止めることができた。
1段エンジン用の電源供給系統で発生した異常の原因については、現在調査中。JAXAは、機体や地上設備の電気的な挙動が影響を与えた可能性が高い、とみている。
TF1や貨物(ペイロード)の先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)、地上設備に損傷は生じていないという。今後は、詳細な原因調査を進め、対策と検証を実施し、3月10日までの予備期間内での打ち上げを目指すとしている。