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東京海上とフィンランド企業、資本業務提携–風災時の屋根の被害把握を迅速化

2022.02.09 07:30

UchuBizスタッフ

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 東京海上ホールディングスとフィンランドのICEYEは2月8日、資本業務提携の提携を発表した。ICEYEが所有する人工衛星で取得した地球の観測データを活用した損害サービスの高度化や新しい商品やサービスを開発化する。

 ICEYEは合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar:SAR)衛星の製造から保守運用、衛星画像の解析などを一貫して提供する技術を持った企業。民間では2022年1月現在で世界最多という計16基の自社SAR衛星を打ち上げている。天候や昼夜を問わずにデータを取得し、世界各地の政府や企業に提供している。

 東京海上グループの東京海上日動火災保険とICEYEは、2020年12月から水災発生時の保険金支払い迅速化に向けた取り組みや災害発生時に自治体やボランティア団体の支援といった分野で協業を進めてきている。

 東京海上グループとICEYEは、ICEYEがもつ「Daily Coherent Ground Track Repeat」のような高精度で高頻度な観測技術と、保険業界に特化した技術開発体制を活用し、自然災害に関する損害サービスのデジタル化に加えて、新たな商品やサービスの共同開発などを進めていくと説明している。

 Daily Coherent Ground Track Repeatは、世界で初めてICEYEが実装したという、同一地点を同一条件で24時間ごとに撮影する技術。衛星軌道を正確に制御し、観測地点の上空を定期的に通過させ撮影することで、常時モニタリングが可能となり、自然災害に伴う微細な地表の変化や施設の状況変化を高頻度、高精度に検出できるという。

 具体的には以下のような取り組みを進める。

  • 風災発生時の損害サービス高度化
    風災が発生した際、屋根の被害は写真撮影が難しく、被害状況の把握や修理業者の手配に時間がかかる。ICEYEと連携し、衛星データや風速などの各種データを組み合わせて解析することで、屋根被害の有無や程度を推定する仕組みを構築する。衛星データをもとに風災による屋根被害発生を能動的に保険会社が把握することで修理業者の早期手配や修理着工の早期化を実現し、迅速な生活復旧に貢献するとしている。
  • 海外グループ会社での各種サービスの高度化
    衛星データを活用し広大な農園での災害被害を把握するなど、海外の農業保険の保険金支払いプロセスを迅速化する取り組みや自然災害などで観測された指標(インデックス)に基づいて定額の保険金を支払う保険(インデックス保険)の開発などを、海外グループ会社で進めていく。日本で衛星データを活用してきた知見を活用して、海外グループ会社での自然災害発生時の対応に展開していくことも検討していく。
  • 衛星データを活用した事故予兆サービスの開発
    衛星の強みである広域性に加えて災害や天候などの外部環境に左右されないなどの特徴を活用して、地盤変化や施設の状態変化のモニタリングを通じて事故の予兆を検知し、アラートを発信するサービスなどの開発を進めていく。
(左から)Daily Coherent Ground Track Repeatのイメージ図、火山の溶岩観測例
(左から)Daily Coherent Ground Track Repeatのイメージ図、火山の溶岩観測例(出典:東京海上)

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