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「ワンチップ顕微観察技術」のIDDK、人工衛星で宇宙バイオ実験を実証へ
2022.12.20 12:16
指先に乗せられるほどの小さなチップで顕微観察が可能な技術(Micro Imaging Device:MID)を開発するIDDK(東京都江東区)は12月19日、Space Forge(英ウェールズ)と業務提携を締結したと発表した。
Space Forgeは、大気圏再突入かつ再利用による持続可能な人工衛星で微小重力環境を利用した製造実験プラットフォームを開発、製造する英企業。2023年前半に人工衛星による微小重力環境で製造を実証するため、実証機「Forge-Star-0」を地球低軌道上に打ち上げる予定。
2023年度には、IDDKとSpace Forgeは共同で民間主導による微小重力環境での宇宙バイオ実験の実証を実施するという。
両社は、宇宙でのバイオライフサイエンス実験を行うための持続可能なプラットフォームとして、IDDKが開発するワンチップ顕微観察技術(MID)を活用した小型バイオ実験室をSpace Forgeのプラットフォーム「Forge-Star」の中に構築するという。
IDDKは、MID技術を用いた超小型3次元蛍光顕微観察デバイス開発について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する第8回研究提案募集に採択されている。
微小重力環境での宇宙バイオ実験は、これまで国際宇宙ステーション(ISS)で研究から産業用まで幅広く実施されてきた。過去20年以上のISSでの実験から筋ジストロフィーの新薬の開発に貢献するなど、さまざまな成果が実証されている。
一方で、ISSでの実験では利用できる国や企業が限られており、価格が不明瞭で産業利用では採算が取れない、実際に宇宙で実験するまでのプロセスが複雑で長いなど、さまざまな課題がある。
実施可能な実験についても、人間が搭乗しているISSや人体自体に危害が及ぶ可能性のない実験に限定されるなどの制約が設けられている。
今回、IDDKとSpace Forgeによる試みは、今まで国主導で進められてきた宇宙実験を民間主導に移行していくための第一歩になると説明する。
宇宙実験のプラットフォームとして、有人のISSではなく人工衛星を活用することで、ISSの運営に携わっていない国の企業にとっても、宇宙実験環境へのアクセスが容易になるという。無人のプラットフォームとなることから、従来よりも安価で緩和された手続きとなり、実験可能な範囲の拡大も期待できるとしている。