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軌道上でSARデータを画像化、観測画像からAIが情報を抽出–QPS研究所とJAXAが共同研究
2022.12.16 18:42
小型の合成開口レーダー(SAR)衛星を開発、運用するQPS研究所(福岡市中央区)は12月16日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「小型技術刷新衛星研究開発プログラムの新たな宇宙利用サービスの実現に向けた2024年度軌道上実証に係る共同研究提案要請」で提案が採択されたと発表した。
JAXAは宇宙基本計画で示された「小型・超小型衛星によるアジャイル開発・実証を行う技術刷新衛星プログラム」として「小型技術刷新衛星研究開発プログラム」(刷新プログラム)を進めている。
刷新プログラムでは、JAXAが研究開発を進めている技術を事業者が保有する衛星に搭載、軌道上で技術実証するとともに事業者と協力して、新しいサービス構想を実証するための共同研究提案を要請していた。この共同研究先としてQPS研究所が選ばれた。
同社は、2機の小型SAR衛星「QPS-SAR」を運用しており、2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星コンステレーションの構築を予定。地球上の任意の場所について、平均10分間隔(準リアルタイム)で取得した地上観測データサービスの提供を目指している。
2021年6月には、ビジネス共創プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」で「軌道上画像化装置」をQPS-SAR3号機以降に搭載することで、衛星による観測からユーザーにSAR画像を提供するまでの時間短縮に向けた実証について契約を締結している。
軌道上画像化装置(Fast L1 Processor:FLIP)は、JAXAとアルウェットテクノロジー(東京都三鷹市)が共同で開発。SARデータを軌道上で画像化する装置。衛星からのダウンリンク量を大幅に削減でき、即応性の高いニーズに応えられるという。
今回の採択では、QPS研究所とJAXAが締結する共同研究で、JAXAが研究開発を進めている「ソフトウェアプラットフォーム」を搭載したオンボード高性能計算機(OBC)をQPS-SARに搭載する。JAXAは、最大200kgの小型衛星の打ち上げ機会を提供する。
観測したSARデータをQPS-SARに標準搭載しているFLIPで軌道上で画像化。OBCに搭載した人工知能(AI)機能を使用し、検出・推論結果が迅速にユーザーへと提供できるかを実証する。
QPS-SARは、Lバンド衛星間通信のための端末を標準搭載しているため、情報が絞られた検出・推論結果をLバンド衛星間通信を使って、地上局非可視領域であってもその出力データを地上に伝送できるという。
処理結果として得られる検出・推論結果を活用し、次の観測に適切な観測衛星を選定。その観測衛星に観測計画を送信するまでを、自律的に迅速にできるかも実証するという。