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九工大、超小型衛星で宇宙背景放射を観測–JAXAの「拡充プログラム」活用

2022.12.09 08:00

飯塚直

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 九州工業大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月8日、超小型衛星(キューブサット)ミッション「高精度姿勢制御6U衛星による宇宙可視光背景放射観測で探る天体形成史」を始動すると発表した。「産学官による輸送/超小型衛星ミッション拡充プログラム(拡充P)」の枠組みで進める。

 今回のミッションは、6U(10cm×20cm×30cm)サイズの超小型衛星に小口径の望遠鏡を搭載し、宇宙初期から現在までに放射された光の総計である宇宙背景放射を観測することで、天体形成史の解明を目指すというもの。超小型衛星向けの統合型姿勢制御(Attitude and Orbit Control Subsystem:AOCS)ユニットを搭載した高精度姿勢制御バスを汎用化し、利用拡大を目指す。

 宇宙可視光背景放射の精密観測には、長時間露光における高い姿勢安定性と広視野での観測が要求されるという。九州工業大学が、広視野遠鏡を搭載した6U衛星ミッションの開発プロジェクトを取りまとめるプロジェクトマネージャーを務める。

 JAXAは、宇宙可視光背景放射の観測ミッションを九州工業大学や共同研究機関と共同で提案。今後のミッション実現に向けた検討を進めるとともに、1U(10cm×10cm×10cm)サイズの高精度姿勢制御系の研究開発を進め、九州工業大学が開発する6U衛星に実装する。

 JAXAと九州工業大学に加え、東京都市大学、関西学院大学、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター、東京工業大学、金沢大学、福井大学が共同で開発を進める。開発した超小型衛星は、2年後をめどにJAXAが選定する打ち上げ輸送サービスで打ち上げる計画。

 九州工業大学は、プロジェクトマネジメントのほかに、ミッション機器開発、高精度姿勢制御バス開発、衛星環境試験、衛星運用、観測データ解析、AOCSユニットの開発・実証、望遠鏡光学系開発などを担当する。

 繊維業で1889年に創業、2016年から衛星事業に参入したセーレン(東京都港区)が高精度AOCSユニットの国産化による性能向上とサービス拡大を目指す。1959年に光学精密機器などを事業とするコシナ(長野県中野市)が超小型衛星向け地球観測望遠鏡の製造販売事業拡大を目指す。

 JAXAは、観測ミッション検討、ミッション機器開発、衛星システム設計などへの協力に加え、技術フロントローディングで開発したAOCS技術の提供、民間小型ロケット打ち上げサービス事業者の選定を担当する。

 拡充Pは、JAXAと大学や企業が連携し、超小型衛星ミッションを実施することを目的として、第1回公募を5月に開始。9月に、衛星開発フェーズ移行案件として九州工業大学から今回の提案があった。

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