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Pale BlueとJAXA、電気推進機の改良などで協力–「はやぶさ」の成果も活用
2022.12.07 11:58
東京大学発宇宙ベンチャーのPale Blue(千葉県柏市)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、人工衛星や宇宙探査機の軌道制御に応用可能な超小型電気推進機について、事業化などに向けた活動を共同で進める(Pale Blue、JAXA)。新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の枠組みで進める。
Pale Blueは、東大でキセノンを推進剤とする30W級電気推進機を開発したメンバーが2020年に創業した企業。キセノンよりも取り扱いやすい水を推進剤とする30W級電気推進機も開発し、「Artemis I」で打ち上げられた超小型探査機(キューブサット)「EQUULEUS」の推進機開発に協力している。
Pale Blueは、現行の30W級電気推進機の能力改善と、300W級電気推進機の新規開発を目指し、JAXAとの活動に取り組む。
具体的には、JAXAの新たな電気推進機向け低圧タンクを活用して、30W級電気推進機の改善を図る。低圧タンクには、京都大学発スタートアップ企業のAtomis(京都市上京区)が持つ金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks:MOF)技術を適用する。
300W級電気推進機については、JAXAが小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」に搭載した「マイクロ波カソード」を活用し、新規開発のリスクを低減する考え。マイクロ波カソードは、マイクロ波を放電してプラズマを生成して電子ビームを出す。
イオンエンジンでは、宇宙機の電位を保つための中和器として活用されている。はやぶさで世界で初めて宇宙で実証された電子源としている。
両者の成果を持ち寄ることで、Pale Blueは新製品となる300W級電気推進機を事業化し、JAXAは改善版30W級電気推進機を活用する将来の超小型衛星ミッションを検討する。
30Wは、深宇宙探査機の軌道制御用主推進機、フォーメーションフライトによる重力波や赤外線天文といったミッションでの推進機への応用が期待されている。300Wは、地球低軌道(LEO)のコンステレーション衛星の軌道制御用推進機として期待されているという。