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民間月探査「HAKUTO-R」ミッション1、打ち上げ延期–今後はSpaceXと協議

2022.12.02 08:00

田中好伸(編集部)

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 ispace(東京都中央区)は12月1日、同日に予定されていた民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1の打ち上げの延期を発表した。今後は、ミッション1の月着陸船(ランダー)を搭載するロケット「Falcon 9」を打ち上げるSpace Exploration Technologies(SpaceX)と協議して打ち上げ日を確定する方針。

 HAKUTO-Rミッション1の打ち上げはもともと11月28日に予定されていた。今回の延期は4回目になる。これまでの延期は打ち上げ日時が確定していたが、今回の延期では打ち上げ日時が未定となっている。

 ispaceは12月1日に記者会見を開催。延期する理由についてispace 代表取締役で最高経営責任者(CEO)の袴田武史氏は「Falcon 9で追加点検作業が発生したことが理由」と説明。SpaceXの判断について袴田氏は「ランダーの安全性を尊重している」と付け加えた。

ispace 代表取締役 CEO 袴田武史氏(11月17日の記者会見で撮影)
ispace 代表取締役 CEO 袴田武史氏(11月17日の記者会見で撮影)

 これまでの経緯についてispace 最高技術責任者(CTO)の氏家亮氏は「11月29日夜にFalcon 9の先端にランダーが格納。11月30日未明にFalcon 9は射点に到着し、Falcon 9を垂直に立てていた。追加点検作業が発生し、Falcon 9はハンガー(格納庫)に戻っている」と解説した。

 「現在、ランダーはFalcon 9と一体化した状態にあり、Falcon 9のフェアリングの中にある。ハンガーに戻したことで明日や来週中に打ち上がることはない」(氏家氏)

 袴田氏は、今回の打ち上げについて「特段ハードルが高いものではないという認識」であると説明。氏家氏は「今回の延期は通常のものであり、SpaceXへの信頼は変わらない」とした。

 今後の予定について氏家氏は「現時点で12月中旬に打ち上がるものとして打ち上げ軌道は計算してある」と説明。「打ち上がる日によっては燃料の使い方は異なるが、2023年4月末の月着陸は変わらない」と解説した。

 仮に12月中旬以降に打ち上がることがあったとしても「月着陸するための軌道は常に計算してある。ミッション自体を諦めることなく、続けていく。4回目の今回の延期はノーサプライズではないが、打ち上げが遅れることは常に意識している」(氏家氏)

ispace CTO 氏家亮氏(11月17日の記者会見で撮影)
ispace CTO 氏家亮氏(11月17日の記者会見で撮影)

 HAKUTO-Rミッション1では、企業からの貨物(ペイロード)を月に着陸させることにもなっているが、氏家氏は「顧客とはコミュニケーションを取っており、理解を得られている」とした。

 打ち上げが延期することで1日あたりのコストがかかるどうかについてispace 最高財務責任者(CFO)の野﨑順平氏は「延期による1日あたりにかかるコストは非開示としている。延期することでispaceの財務には影響しない」と解説した。

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