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民間月探査「HAKUTO-R」ミッション1、11月28日に打ち上げ–月には5カ月後
ispaceは11月17日、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の第1弾となるミッション1の打ち上げ予定日時を11月28日午後5時46分(米東部標準時=ESTで11月28日午前3時46分)と発表した。
HAKUTO-Rは2025年までに3回の月面着陸ミッションを予定しており、独自の月着陸船(ランダー)と月面探査車(ローバー)を開発して、地球-月輸送サービスの技術検証を目的としている。商業利用の可能性から多くのパートナー企業が参画している。
同社創業者であり、代表取締役で最高経営責任者(CEO)の袴田武史氏は、11月16日に「Artemis I」を打ち上げた新型ロケット「Space Launch System(SLS)」を評価しながら、「我々のミッションは宇宙に生活圏を築いていくこと。(宇宙ビジネスの)市場成長に寄与したい」と意気込みを語った。
10のマイルストーン
HAKUTO-Rは2016年に構想を開始し、2017年に開発を開始。ミッション1は、11月28日午後5時46分に米フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地からSpace Exploration Technologies(SpaceX)のロケット「Falcon 9」で打ち上げられる予定だ。
月面着陸ミッションであるミッション1で使用するランダーのフライトモデルは、10月下旬からドイツから米フロリダ州ケープカナベラルに輸送し、11月時点で射場付近の施設内でロケットに搭載する工程を、打ち上げ約2日前まで終える予定だ。
HAKUTO-Rは全3回のミッションでランダーとローバーの設計と技術を検証するとともに、月面輸送サービスや月面データサービスの提供という事業モデルも検証して、信頼度や成熟度を、商業化にふさわしい水準まで高めることを計画している。
月面輸送サービスや月面データサービスなどの本格的な商業化を見据えて、継続的で短いサイクルで技術や事業モデルの進化が不可欠と説明。今回のミッション1で得られたデータやノウハウを蓄積して、月面着陸と月面探査が目的であるミッション2、その後のミッション3にフィードバックする。ミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスを米航空宇宙局(NASA)をはじめとする顧客企業に提供することで、有人の月面探査プロジェクト「Artemis」に貢献することを狙っている。
ミッションを短いサイクルで継続的に行うためとして、ミッション1では、打ち上げから月面着陸までの間で10段階のマイルストーンを設定、マイルストーンごとの成功基準(サクセスクライテリア)も設定している。
ミッション途中で課題が発生して、すべてのマイルストーンを達成できない可能性もあるが、その事象だけを捉えて単なる失敗と評価せずに、発生した課題と、それまでに得られたデータやノウハウなどの成果を正確に把握して、次のミッションにつなげていくことが持続可能な技術進化と事業モデルに必要と解説している。
ミッション1の10のマイルストーンは以下の通り。
- 打ち上げ準備の完了
- ランダーのすべての開発工程を完了
- 打ち上げロケットへの搭載が完了
- 打ち上げと分離の完了
- ロケットからランダーの分離が完了
- ランダーの構造が打ち上げ時の過酷な条件に耐えられることを証明し、設計の妥当性を確認するとともに、将来の開発やミッションに向けてデータを収集
- 安定した航行状態の確立
- ランダーとの通信を確立し、姿勢の安定を確認するとともに、軌道上で安定した電源供給を確立。ランダーの基幹システムとペイロードに不備がないことを確認