インタビュー
JAXA職員が民間企業で働く「越境プログラム」がもたらす意外な効果(前編)
2022.09.05 08:30
――なぜ資生堂に?
島氏:いくつかの候補企業を提示して頂いた中で、資生堂さんなら企業理念や共創協業について学べるかなと言う点、私が化学出身なので分野が近い点からお願いしました。
――ありがとうございます。では、デザインコンサルティング会社IDEOに越境された長福さん、どうぞ。
長福紳太郎氏:自分にも組織にもゼロから一を生み出す力が足りていないんじゃないかという課題意識がありました。
2010年入社以来、ロケットを担当しています。ロケットは失敗してはいけない世界。入社後繰り返し言われたのは「うまくいっている間は変えるな。常に変わったところを疑え」。変化させることに対する拒否感です。最初は「なるほど、だからロケット打ち上げはうまくいくんだ」と思っていた。でも、最近は違うなと思っていて。
――なぜ最近になって?
長福氏:きっかけはSpaceX(Space Exploration Technologies)のように従来と全然違うコンセプトのロケットが出てきたこと。もしかしたら僕らはちょっと間違っているんじゃないか。新しい価値観ややり方を探したいと思ったんです。
――確かにSpaceXは今までのロケット界の常識を壊してますからね。なぜIDEOに?
長福氏:2017年頃、(岡本)太陽さんら航空技術部門がIDEOと組んだ事業開発プロジェクト「Future Blue Sky」で「デザイン思考」というアプローチを知ってワークショップにも参加させてもらったんです。
――デザイン思考とは?
長福氏:技術ありきでなく、商品やサービスを使う人間の視点に立ってアイデアを生み出す思考法です。自分でも社内の予算をもらってデザイン思考のアプローチを使って宇宙輸送で何かできないか検討していました。それをもっと加速したいと思っていた時に、越境プログラムの募集がかかって「これだ!」と。
デザイン思考の総本山的なIDEOに行かせてもらいました。週1回だとあまり仕事ができず、文化にもどっぷり浸かれないと思い、5週間毎日という短期集中型で越境させてもらいました。
「情熱の大きさ」に我が身を振り返る
――では、実際に越境プログラムの内容と気付きを教えて下さい。
岡本氏:目的は、金融機関が投資や融資をする際に、どういった社内プロセスや考え方、方針で行っているのかを学びたい。これが一番の力点です。
僕が入ったのはDBJのイノベーション推進室という部署で10人程度のチームでした。
例えば、電力の変換・制御を行う次世代のパワー半導体を作るスタートアップ、AI(人工知能)を活用した画像解析により患者の常時モニタリングなどを行うシステムを開発するスタートアップなど、さまざまな分野から将来有望な事業会社に投資を検討、実行する部署です。同僚の人たちがそれぞれ投資融資の検討・実行案件をもっていました。
実施した投融資のフォローアップ、あるいは投融資の実行を目指して、投資先とコミュニケーションを取っていく。そのミーティングなどに同席させてもらいました。
――どんな発見や学びがありましたか?