インタビュー
電波通信では間に合わない–衛星を光通信で結ぶワープスペースが狙う新ビジネス
中軌道という強み
――WarpHub InterSatと競合するサービス、ワープスペースと競合する企業は存在しますか。
この1~2年で多くの類似コンセプトを持つ企業が登場しました。国内ならSpace Compass、海外ならカナダのKepler Communications、ドイツのRivada Space Networksが代表的でしょうか。
弊社は軌道のセグメントに注目しています。Space CompassはGEO、Kepler Communicationsに代表されるメガコンステレーション系はLEOです。光通信は地上からの高度に比例して端末が巨大化し、消費電力も大きくなる物理的制約に依存します。LEOより中軌道(高度2000~3万6000km、MEO)、MEOよりGEO、軌道が高くなるほど光通信端末は大型化し、重さも増し、消費電力も大きくなってしまう。
現在の光通信端末の重さは50kg程度ですが、LEOを周回する小型衛星の重さ自体が50~100kg程度といわれています。
いまボリュームゾーンで広がっているのはLEO衛星。地球観測衛星も高度500km前後に集中しています。LEOとGEOにある衛星の通信を成立させる光通信端末は巨大化せざるを得ません。
LEO衛星のクロスオーバー時にLEO間同士の光通信を成立させるには1~2分かかりますが、数分後には次の衛星にハンドオーバーしなければなりません。この現状を見るとLEOで同種のサービスを実現するのは難しいでしょう。
そのため、我々がターゲットとするMEOは特定ニーズに特化して対応する市場であり、競合エリアは多種多様ですが、製造原価の維持とビジネス利益を見つけなければなりません。その観点で最も効率的だったのがMEOです。
2027年がポイント
――3月にCEOに就任しましたが、どのような背景からでしょうか。
2022年から常間地が体調を崩し、資金調達など重要な場面に出席できなくなりました。そこで私に白羽の矢が立った次第です。2019年以前は、サイバーセキュリティ系のスタートアップに勤めていましたが、昔からの友人である常間地から(ワープスペースの)CEO着任時に協力を求められた経緯があります。その後、私はCOO(最高執行責任者)として、サプライチェーンやヒューマンリソース、キャッシュフローの管理、コーポレート業務の統括など組織全般を見てきました。
――ワープスペースは現在、投資段階にあるかと思いますが、収益が黒字化するめどはいつ頃になるのでしょうか。今後、株式を公開する考えはありますでしょうか。
2027年が一つのポイントです。いわゆる衛星コンステレーション時代が訪れ、数百社ではなく、適格な数社と契約すれば売り上げも確保できるはずです。その戦略で世界中にアカウントを広げてきました。
2022年9月に日本で民間としてSAR衛星コンステレーションの構築を進めるSynspective、2023年4月にはApple共同創業者である共同創業者Steve Wozniak氏が設立したPrivateer Space、5月にオーストラリアの地球観測衛星事業者であるLatConnect 60とそれぞれ提携しました。これで3社目となりますが、名前を明かせませんが、4社目の契約が進行中です。
IPO(上場)で資金を得れば、次のテクノロジーを乗せて、よりアグレッシブな第2世代のコンステレーションを打ち込むことで、参入障壁を高めつつ(他社の)追随を許さないシナリオを描いています。