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「バーチャル宇宙飛行士」体験で子どもたちにワクワクを–宇宙教育を広げる石塚千彬さん【宇宙のお仕事図鑑】

2024.01.01 09:00

井口 恵(Kanatta代表取締役社長/コスモ女子運営)

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 「宇宙関係の仕事につきたいけれど、どんな仕事があるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。実は宇宙業界は日々変化をしており、新しい職種がどんどん生まれていますが、あまり知られていないように思います。

 そこで、この連載「宇宙のお仕事図鑑【コスモ女子】」では、“宇宙を身近な存在に”をテーマにした女性中心の宇宙コミュニティである「コスモ女子」が、宇宙業界のさまざまな分野で活躍する女性を紹介していきます。第2回は宇宙教育に取り組む、amulapo(アミュラポ)教育マネージャーの石塚千彬さんにお話を聞きました。

【プロフィール】明星大学理工学部天文学研究室を卒業後、茨城大学大学院地球環境科学コースへ入学し、2022年3月に理学修士を取得。太陽表面の磁場活動や、磁気嵐についてを専門に研究。学生時代に天文アウトリーチ活動に携わっていたことがきっかけで、amulapoの教育系イベントのスタッフとしてインターンを開始。2022年4月に入社。

【仕事について】宇宙の面白さを身近に–体験を通して学ぶイベントの企画・運営

――お仕事の内容について教えてください。

 amulapoという会社で教育事業マネージャーを務めています。amulapoは”科学の力で世の中を盛り上げたい”という想いをもった若い研究者たちが立ち上げた、2020年創業の宇宙ベンチャーです。XR、ロボット、AIなどのICT技術が強い会社ですが、その技術を活用して小学校高学年から中学生を対象にしたイベントを企画・運営しています。

 XRを利用して、月面探査や無重力空間、ISS内の実験を疑似体験できるコンテンツも人気があります。オフラインイベントはまだ定期的な開催が難しい状況ですが、主に自治体からの依頼を受けてコンテンツを提供させてもらっています。

 今はまだ誰しもが宇宙に簡単に行けるわけではありませんが、XRをはじめとした映像技術を使えば宇宙の楽しさやおもしろさを体感することはできます。たとえば最近では、鳥取砂丘での未来の月面都市を体験できるアクティビティーや、小学生を対象とした「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」を企画したくさんのメディアにも取り上げていただきました。

「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」
夜の鳥取砂丘で宇宙飛行士が体験できる「月面極地探査実験A」

――仕事でやりがいを感じることはありますか?

 仕事を通じて、魅力的な人にたくさん出会えることが楽しいですね。特に、自分の身近では関わることのなかった方々は新たな世界を知るきっかけにもなります。たとえば、月面探査など宇宙系の専門分野を極めた人だったり、スポーツや観光などのお仕事をしている方とも出会いがあったり。人見知りな性格なので、プライベートでは決して出会えないだろうなと思うんです(笑)。そう考えると、仕事を通じて新しい出会いとご縁が生まれることに感謝ですし、そこから事業が広がっていく過程にもすごくやりがいを感じています。
 
 あとは、やはり子どもたちがワクワクしている姿を見るときは、やりがいを感じます。さきほど紹介したXRで宇宙を見たり、無重力を体験したりといったイベントで新しい経験をすることが多いと思うんですが、本当にいい顔をしていて楽しそうなんです。自分たちが1つ1つこだわって作り上げた活動などはまさに子どもが新しい知識、経験をするチャンス。子どもたちに素敵な体験として届いているなと体感したときは、毎回すごく嬉しいです。

イベントの様子

――大変だと感じるところはどこですか?

 amulapoは、まだまだ創業期の会社なので、1人がこなす仕事の範囲が広く、教わる時間が少ないことは大変だなと感じます。ベンチャー企業で新卒から働くとはそういうことなのだと思いますが、1つ1つ自分で調べて失敗しながら少しずつ学んでいくしかありません。その分、早くから責任ある仕事に関わることができ、経験をたくさん積めるのは恵まれているなと感じます。

――印象に残っている仕事を教えてください。

 「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」という自社教育コンテンツの立ち上げに、実証実験の段階から関わった経験が一番印象に残っています。2021年に開催された事業創造プログラムに、amulapoの事業が選ばれました。そこで、教育分野のノウハウと実績がある大手企業様の力を借りて、自社コンテンツづくりがスタートしました。

 私はもともと教師を目指していたこともあり、学校教育の知識は少しあったのですが、「教育コンテンツづくり」というのは、また違う視点も大事になってきます。子どもたちにとって学びがある内容にするのはもちろんですが、事業として成り立つことも考える必要があります。

 ターゲットは誰なのか?どのように届けるのか?採算は取れるのか?など、一緒に創っていく中で、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。コンテンツの実証実験では、実際に子どもたちに体験をしてもらい生の意見を聞いて、改善を繰り返していきます。

 実際に、コンテンツが完成し、子どもたちの喜ぶ顔や親御さんの感想を聞いて、子どもたちに宇宙を好きになるきっかけづくりができたのかなと感じたときは、とてもうれしいものがありました。現在も、amulapoの主力コンテンツであり会社の顔となっているコンテンツ作りに関われたことはとても印象に残っています。

――石塚さんの仕事には、どんな適性が必要だと思いますか?

 ベンチャー企業の仕事という意味では、自分をマネジメントする力が必要です。自分で「やりたいこと」はしっかり持ちつつ、「やらなきゃいけないこと」を把握して実行できること。やりたいことがないと、指示待ちになってしまうので、自分の考えを持つことは大事です。ただ、同時に、ベンチャーの限られたコストやリソースや全体をみることや、会社全体にとって今必要な仕事を理解することも必要です。

  また、教育分野の仕事という意味では、相手目線で考えられるかどうかが大事だと思います。マーケティング力とも言えますかね。たとえば、宇宙に今は興味がない人にとってはどうか?子どもたちにとってはどうか?親御さんにとってはどうか?など幅広い見方が必要です。 現場にきちんと足を運んで、自分で体験して商品づくりに反映していく姿勢も大事かなと思っています。

【きっかけ】プラネタリウムで星の世界に感動した

宇宙を好きになったきっかけは?

 最初のきっかけは小学生のときに観たプラネタリウムです。そのプラネタリウムは一般的な星の解説ではなくて、「星の王子様」のアニメーションプラネタリウムでした。子どもながらに宇宙とか星の世界ってなんかすごく素敵だな、ロマンチックだなと感じて、その日から宇宙を好きになりました。

―amulapoに就職したきっかけは何ですか?

 大学院のゼミの先生が代表の田中(amulapo代表取締役CEOの田中克明氏)と知り合いで、紹介していただいたのがきっかけです。もともとは科学館の学芸員などの仕事に就きたいと思っていたので、教育コンテンツの企画をしているamulapoの事業内容に興味があり、最初はイベントのアルバイトスタッフとして入りました。

 イベントでは企画・運営などを担当したのですが、回を重ねるごとに担当できる分野が増えてきて、すごく楽しかったです。そのまま2年半くらいインターンをして、新卒で就職し、いまに至る感じです。

amulapo(アミュラポ)教育マネージャーの石塚千彬さん

【これから】宇宙好きな人がもっと宇宙業界で働けるように

今後、仕事を通じて実現したいことはありますか?

 私は運良く宇宙関係の企業でお仕事をしていますが、宇宙への興味も知識もあるのに、就職先がなくて仕方なく宇宙業界から離れてしまうひとをたくさん見てきました。それが本当に残念で。amulapoを成長させることは、宇宙市場の拡張にもつながっていると思うので、宇宙が好きな人が働く場所が増えてくれたら嬉しいです。

 あと、私たちのイベントをきっかけに宇宙飛行士になったという人が、イベントに参加した子どもたちの中から現れたら、それはとっても素敵なことだと思いますね。

宇宙業界を目指す方にメッセージをお願いします。

 宇宙というと、研究や開発のような専門分野を持った方しか仕事がないと思われている方が多いと思うのですが、実際はそんなことはありません。むしろ、事務系やマーケティングなどの経験がある人は、これからの宇宙業界にとってすごく必要な人材だと思います。

 学生さんでも、文系だからといって諦める必要なんて全然ないですし、すでにお仕事をされている方でも、宇宙をビジネスの場にしてもらえたらもっと盛り上がると思うんです。いろんな経験のある方が宇宙業界に入ることで、宇宙業界自体のさらなる加速に繋がると思います。

 私自身、開発の専門技術やビジネススキルは持ち合わせていないのですが、宇宙に関わりたいという気持ちを持って、いろんなチャレンジをしてみたら、気付いたら自分が活躍できる宇宙の仕事にたどりついていました。宇宙業界に限らずですが、やりたい気持ちがあったら何か発信やアウトプットをして、ぜひ道を切り開いて欲しいなと思います。

〇宇宙のお仕事図鑑とは?
このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで「宇宙のお仕事」を発信していきます。

〇コスモ女子とは?
『宇宙を身近な存在に』をテーマに活動している女性コミュニティです。勉強会やイベントを毎月開催。星や天体の楽しみ方から、宇宙旅行・教育・宇宙ビジネスまで幅広いテーマで開催しています。\世界初!/女性中心のチームでの衛星打ち上げPJを発足中!(2024年度中打ち上げ予定)

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