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ロケット初打ち上げ再び延期、地元は「残念」でも前向き

2022.10.20 12:30

朝日新聞

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 民間の発射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)で今年末に予定されていた小型ロケットの初の打ち上げが、再び延期されることになった。昨年12月につづき2度目の延期表明。ロケットに期待する関係者は残念がったが、準備期間が増えると前を向いた。

 「今年末の打ち上げは困難な状況になった。楽しみに準備していただいた方には申し訳ない」

 串本町のホテルで19日に開かれた「スペースポート紀伊周辺地域協議会」の臨時総会。スペースポート紀伊を建設した「スペースワン」(東京)の阿部耕三取締役は、地元首長らを前に陳謝した。来年2月末ごろの打ち上げを目指すという。

 阿部取締役の説明によると、コロナ禍がおさまらないうえ、国際情勢が緊迫し、必要な部品を必要なタイミングで入手できない状況だという。民間初の発射場として「見本」がないなか手探りですすめてきて、様々な想定外なことに直面しているとも語った。

 同社は2019年4月からスペースポート紀伊の建設をはじめ、当初は今年3月に1号機発射をめざしていた。だが昨年12月、このときも新型コロナの影響による部品調達の遅れを理由に、今年末に延期すると表明していた。

 施設自体は今年3月末までに完成し、打ち上げに向けた試験を繰り返している段階だという。阿部取締役はこの日の臨時総会でロケットの打ち上げ直前までをリハーサルしたときの動画を流すなどして、計画が前に進んでいることもアピールした。

 総会に出席した串本町の田嶋勝正町長は「今度こそ打ち上げられると期待していたが、初号機は失敗するわけにはいかない。社会情勢を考えると難しい。残念だが、仕方ない」と延期へ理解を示した。「打ち上げに大変慎重なのはいいこと。延期された期間を観光客の車の渋滞対策などに使えると、前向きに考えたい」と話した。

 公式見学場が設けられる隣町の那智勝浦町の堀順一郎町長も「大勢のひとが楽しみにしていたので、残念」としたものの、「町としてロケット発射場は町活性化の千載一遇のチャンス。延びた期間を地域振興のための期間ととらえて活用したい」述べた。

 下宏副知事は総会で「(ロケット打ち上げは)地域の活性化につながると関心が高い。成功してもらわないといけない。大成功できるよう準備を万端にしてほしい」とスペースワンに要望した。

 協議会の事務局を務める県産業技術政策課の大原真晴課長は取材に対し、「残念だが、状況が整わないのに打ち上げられないだろう」とし、「初号機をしっかり成功させて『ロケット発射場がある和歌山』を世に知らしめてほしい」と期待を込めた。(国方萌乃、直井政夫)

臨時総会のあと、報道陣の取材に応じる阿部耕三取締役=2022年10月19日、串本町サンゴ台、国方萌乃撮影
臨時総会のあと、報道陣の取材に応じる阿部耕三取締役=2022年10月19日、串本町サンゴ台、国方萌乃撮影

(この記事は朝日新聞デジタルに2022年10月20日10時15分に掲載された記事の転載です)

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