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NASAのハッブル宇宙望遠鏡、障害による停止から再稼働までの道のり
2021.07.22 08:30
Hertz氏は「われわれは、まずチームが手順を検討し、それらが適切であり修正の必要がないかどうかを確認した後、アップロードを開発し、独立したチームがそれをレビューして最終的に実行するかどうかを決定するという実績あるプロセスを有している」とし、「変更がどれだけ簡単か複雑かに関係なく、不手際がないことを確実にするための綿密なプロセスを実行する」と述べていた。
同チームが自信を示していた理由の1つには、HSTの遠隔修理が初めてではないという点もあった。この宇宙望遠鏡のSI C&DHは2008年に、別のコンポーネントの障害によって地球へのデータ送信を停止したことがあったのだった。
その際にも、SI C&DH側の機器の1つをバックアップ系統に切り替える作業が実施され、HSTは無事に再起動された。1カ月におよぶ停止期間を経た後、同望遠鏡が最初に送信してきたのは、地球から4億光年離れた銀河が別の銀河の中心を横切っている映像だった。
HSTチームは今回、丸1日をかけて切り替え作業を実施した後、観測機器を待機モードから復帰させるプロセスを開始した。HSTは現在、観測作業を再開するための準備を完了しており、チームはまもなく通常運用が再開されると見込んでいる。HSTは今回の障害が発生する前には、週あたりでおよそ150ギガビットにもなる生の観測データを地球に送信してきていた。
NASAのBill Nelson長官は、「HSTは象徴であり、過去30年間にわたって宇宙に関する驚くべき洞察をわれわれに与えてくれている」と述べ、「私はHSTのチーム、それも現メンバーだけでなく、問題解決のために駆けつけてサポートと専門性を提供してくれた元メンバーに対して誇りを感じている。彼らの献身と思慮深い作業のおかげで、HSTは31年にわたる成果のさらなる先を目指し、宇宙に向けたその目でわれわれの視野を広げてくれるだろう」と続けた。
HSTは、31年の歴史の中で、150万回以上にわたる宇宙観測を実施してきており、そのデータによって1万8000件におよぶ論文の発表にも貢献してきている。宇宙観測は、宇宙の加速膨張や銀河の進化といった、現代における重要な科学的発見を支えるものとなっている。
2021年10月にはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が打ち上げられ、HSTとともに運用される予定だ。科学者らは、太陽系の進化の歴史を解明していく上で、宇宙を観測するこの新たな目を活用していくことになるだろう。これら2基の宇宙望遠鏡は連携し、宇宙のさらなる知識を科学者らにもたらしていくと期待されている。このため、少なくとも現時点で見る限り、HSTの引退は当面なさそうだ。
(この記事はZDNet Japanからの転載です)