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NASAのハッブル宇宙望遠鏡、障害による停止から再稼働までの道のり

2021.07.22 08:30

ZDNet Japan

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 NASAのエンジニアらは、1990年にHSTを初めて宇宙に打ち上げた時のメンバーを呼び寄せるようなことも実行した。そして一連のテストを実施した後、この問題がより広範囲なSI C&DHシステム内の、具体的にはペイロードコンピューターのハードウェアに安定した電圧で電力を供給するためのPower Control Unit(PCU:電源制御ユニット)に存在していると結論付けた。

ハッブル宇宙望遠鏡は地球の上空600kmの衛星軌道上で、31年間にわたって宇宙の観測を続けてきている(提供:米航空宇宙局=NASA/宇宙望遠鏡科学研究所=STScI)
ハッブル宇宙望遠鏡は地球の上空600kmの衛星軌道上で、31年間にわたって宇宙の観測を続けてきている(提供:米航空宇宙局=NASA/宇宙望遠鏡科学研究所=STScI)

 PCUは、ペイロードコンピューターの動作電力として5ボルトを印加する定電圧レギュレーターと、その出力電圧をチェックし、電力供給レベルが定格外になった場合にコンピューターに稼働停止を命令する二次システムから構成されている。

 地上からのコマンドでこのコンポーネントをリセットすることはできないため、NASAのチームはバックアップのPCUを搭載している予備系統のSI C&DHモジュールへの切り替えを実行する必要があった。これは、HSTに搭載されているその他のさまざまなハードウェアユニットに影響を与える可能性があるという点で、リスクの高いオペレーションだった。

 HSTチームはテストとシミュレーション、確認、レビューの後、無事にバックアップシステムへの切り替えを成功させた。これにはバックアップのPCUを稼働させる作業だけでなく、コマンドおよびデータの送信やフォーマット化を受け持つSI C&DHをバックアップ系統へと切り替え、同じユニット上に装備されているバックアップのペイロードコンピューターを起動するといった作業も含まれていた。

 NASAは、その他のハードウェア機器もSI C&DHの予備系統に接続する上で、かねてから予想していた通り、代替インターフェースに切り替える必要があったと述べた。

 NASAの宇宙物理学部門のディレクターであるPaul Hertz氏は作業の過程で、米ZDNetに対して、「運用上の指揮系統を切り替える作業は毎回、一大作業として扱うことになる」と述べ、「こういった変更の結果として発生し得る状況すべてを考慮した上で、HSTに正しい命令を送信することで、正しく安全な方法で切り替えが実行されるよう、適切かつ確実なかたちで作業を遂行したいと考えている」としていた。

 7月に入って以来、HSTチームはこの切り替えの準備を進めていた。このプロセスには、作業手順のテストを準備した後、何日もかけて手順をテストするとともに、バックアップハードウェアへの切り替えに関連するリスクすべてを評価するためのレビューも含まれていた。

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