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JAXA、「超広帯域マイクロ波」計測技術を中心にしたシンポジウムを12月に開催
2022.11.16 08:00
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は既存の計測技術で生じていた課題を解決できるという世界初の「超広帯域マイクロ波」計測技術と、その技術の社会実装で実現可能な社会を考えるシンポジウムを12月14日に開催する。11月14日に発表した。
マイクロ波計測技術は、地上で気象観測に用いるレーダーや衛星搭載のマイクロ波を観測する放射計など社会基盤として活用されている。現在では、データ処理技術の進展により、乳がん検査機器、セキュリティゲート、車載レーダーなどでの活用も期待されている。
これまでJAXAが開発、運用してきた衛星に搭載されるマイクロ波放射計は、通信電波などの人工電波が混入することで引き起こされる観測データの欠損が大きな課題として認識されていた。
そこでJAXAは、従来の課題を克服するために、超広帯域かつ超高周波数分解能なマイクロ波計測技術の研究開発を開始。同技術を人工衛星に搭載するセンサーや地上のレーダー、放射計などに適用することで、観測データの利用促進や新事業開発など、新たな価値を創造することを目指している。
今回公開する世界初のマイクロ波計測技術は、将来情報通信社会の高度化に伴い人工電波による観測への悪影響が加速することが予想される中、正確かつ高精度な観測データの大幅な充実化と、そのデータ取得技術を社会に実装することで従来の課題解決への貢献が期待できるという。
JAXAは超広帯域マイクロ波計測技術を活用した、以下の3つの計測アプリケーションを科学技術振興機構(JST)の「未来社会創造事業」に提案し、採択された。
- JAXAの衛星搭載マイクロ波放射計「超広帯域電波デジタル干渉計(Scanning Array for hyper-Multispectral RAdiowave Imaging:SAMRAI)」
- ウェザーニューズの多周波気象レーダー放射計
- アンテナ技研の地中・表面変位探知レーダー
これらの計測アプリケーションの特性を生かした単独利用に加えて、シナジーにより気象防災分野へのソリューションを提供することが期待されているという。例えば、最適な鉄道計画運休・道路交通規制の区間及び期間の提供が可能になるとしている。
シンポジウム「超広帯域マイクロ波計測技術で切り拓く未来社会~固定概念を打破し新たな価値を創造~」は日比谷国際ビルコンファレンススクエアで12月14日午後1時30分~午後5時に開催。ウェブによる同時配信(選択300人)も予定している。
シンポジウムでは、各分野の専門家や事業者を招き、社会にイノベーションを起こすことが期待される新たなマイクロ波計測技術と、それにより実現する未来社会などを紹介する。
会場では、新開発の超広帯域アンテナの実機も展示、この世界初の技術を搭載した航空機による観測実証実験で得られた人工電波の識別/分離結果や海況推定データも紹介するという。