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NASA次年度予算案の詳細が明らかに–職員は3割減、40近い科学プログラムを中止
Trump(トランプ)政権は米国時間5月31日、米航空宇宙局(NASA)の予算案の詳細を公開した。これには全体で約24%の予算削減や複数の科学探査ミッションの中止が含まれる。
5月2日に発表された2026会計年度の予算案の簡易版では、NASA全体を24%削減、NASAが主導する国際的な月探査計画「Artemis」に含まれる月周回有人拠点「Gateway」を中止するとともにArtemisで使用されるロケット「Space Launch System(スペース・ローンチ・システム、SLS)」と有人宇宙船「Orion」の段階的な廃止が含まれている。国際宇宙ステーション(ISS)の運用の縮小、火星サンプルリターン計画(Mars Sample Return:MSR)、衛星「Landsat Next」の見直しも挙げられている。
今回新たに発表された詳細版では引き続き、NASA全体で188億ドル(約2兆7000億円)、科学プログラムは39億ドル(約5600億円)に大幅に引き下げられることが提案されている。2025会計年度の全体予算は249億ドル(3兆6000億円)であり、2026会計年度は24%削減されることになる。
詳細版で中止が提案される科学プログラムとして、現在は太陽系外縁部を探査している冥王星探査機「New Horizons」(ニューホライズンズ)、木星を周回している探査機「Juno」(ジュノー)、火星周回衛星「Mars Odyssey」(マーズ・オデッセイ)と「MAVEN」、欧州宇宙機関(ESA)と共同で2028年に打ち上げ予定の火星探査車「Rosalind Franklin」(ロザリンド・フランクリン)が挙げられている。合計41におよび、これはNASAの科学プログラム全体の3分の1を中止することになる。
一方、多くの人が中止を懸念していた次世代宇宙望遠鏡「Nancy Grace Roman Space Telescope(NGRST)」(ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡)は対象外となったが、予算は半分以下の1億5660万ドル(約220億円)に減額された。
宇宙探査では、民間企業が開発するロケットや宇宙船に資金を提供する「Commercial Moon to Mars (M2M) Infrastructure and Transportation Program」が新設され、8億6400万ドル(約120億円)を割り当てている。
詳細版ではまた、NASAの職員数を現在の1万7391人から1万1853人への削減を提案。3割の削減になる。NASAの役割は「主要な役割は宇宙探査であり、Apolloに刺激を受けた過去の世代と同様に、NASAは刺激的で野心的な宇宙ミッションを通じて、次世代の探検家を刺激する」としてSTEM教育を推進する部署の終了も求めている。
詳細版の発表を受けて、NASAを擁護する立場である、宇宙探査を促進する非営利組織のThe Planetary Societyは、予算案を「後退であり、野心の縮小」と表現、「1961年度以来、NASAにとって最低の予算」と指摘している。「科学にとって絶滅レベルの出来事」
惑星協会はまた、予算案について「効率性を重視したものではない」と説明、「納税者のこれまでの投資、数十億ドルを無駄にする」と反対している。
「戦略的な政策立案の産物ではない。NASAもNASAの長官候補も、この予算案の策定で行政管理予算局(OMB)から相談を受けていなかったことは明らか。この予算案は、国家政策を装った、選挙で選ばれていない官僚の個人的な思惑にすぎない」(The Planetary Society)
連邦議会で公聴会を開いて議論されるため、今回ホワイトハウスから示された予算案がそのまま予算になるわけではない。